MGM-29 (ミサイル)

MGM-29 サージェント：アメリカ陸軍の短距離弾道ミサイル

MGM-29サージェントは、[アメリカ合衆国]]のジェット推進研究所]が開発した短距離[[弾道ミサイルです。固体燃料ロケットモーターによる推進とW52核弾頭搭載能力を備え、1962年6月にアメリカ陸軍で運用が開始されました。既存のMGM-5コーポラルの後継として配備され、西ドイツなどアメリカ国外への展開も行われました。しかし、1970年代にはMGM-52ランスに更新され、1977年5月にアメリカ陸軍での運用は終了しました。

開発の歴史

サージェント計画の端緒は、1948年まで遡ります。JPLは、コーポラルE地対地ミサイル試験機の打ち上げ直後から、アメリカ陸軍向け新型固体推進剤ロケットの研究に着手しました。初期段階では、戦術ミサイルに実装可能な固体燃料ロケットモーターの開発に苦戦しましたが、ゼネラル・エレクトリックのヘルメスA-2計画や、中心燃焼式固体燃料ロケットモーターの開発・試験を経て、技術的基盤を確立しました。

1953年には、JPLがサージェント研究の継続契約を獲得。1955年には、レッドストーン兵器廠の技術管理監督の下、サージェント戦術地対地ミサイル計画が正式に開始されました。チオコール・ケミカル社も開発に参画し、ロケットモーターの金属部品設計や製造を担当しました。当初はSSM-A-27という制式名が割り当てられましたが、後に変更されました。

1956年には最初の試験ミサイル（XM15）の発射に成功。スペリー・ジャイロスコープ社が誘導システム開発に協力し、1960年にはスペリー・ユタ社が主契約者となりました。1961年には研究開発段階が終了し、1962年6月にM15として作戦運用が開始されました。陸海空軍の名称統一に伴い、試験ミサイルXM15はXMGM-29A、作戦運用ミサイルM15はMGM-29Aに改称されました。

技術的特徴

サージェントは、コーポラルと比べて高い信頼性と運用効率が大きな特徴でした。固体燃料ロケットモーターは液体燃料に比べて安全で、発射準備時間も大幅に短縮されました。射程制御には、ドラッグ・ブレーキを用いた独特のシステムを採用していました。また、慣性誘導システムの採用により、地上設備の簡素化や対抗策に対する抵抗力向上に成功しました。

コーポラルは液体燃料を使用し、発射準備に9時間必要でしたが、サージェントは固体燃料と簡素化されたシステムにより、発射準備時間を1時間未満に短縮しました。これは、迅速な展開と柔軟な運用を可能にする重要な要素でした。

運用状況

サージェントは1962年6月に最初の配備を開始しました。当初は、十分な支援体制が整っていない状況での運用となりましたが、アメリカ陸軍はその後、複数のサージェント大隊を編成し、訓練を開始しました。1963年にはアメリカ国外への配備が始まり、西ドイツなどへの展開が進められました。軍事援助計画（MAP）を通じて、西ドイツに複数のサージェント大隊が配備され、冷戦における抑止力として重要な役割を果たしました。

サージェントシステムの生産は1964年に終了し、1970年代初頭からMGM-52ランスへの更新が開始されました。アメリカ陸軍における最後のサージェント大隊は1977年5月に解散し、全てのサージェントの運用は終了しました。

各型

SSM-A-27: 最初の制式名称
XM15: 試験ミサイル
M15: 作戦運用ミサイル
XMGM-29A: 試験ミサイル（XM15の改称）
MGM-29A: 作戦運用ミサイル（M15の改称）

仕様（MGM-29A）

全長：10.54 m
直径：0.79 m
翼幅：1.50 m
発射重量：4,570 kg
速度：超音速
射程：46～140 km
機関：チオコール XM-100 固体燃料ロケットモーター
推力：200 kN
燃焼時間：34秒
* 弾頭：W52熱核弾頭（核出力：200 kt）

サージェントは、冷戦時代のアメリカ陸軍の戦力として重要な役割を果たしたミサイルでした。その開発と運用は、固体燃料ロケット技術や慣性誘導システムの発展に大きく貢献しました。

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