MGM-5 (ミサイル)

MGM-5 コーポラル：アメリカ初の戦術核ミサイル

MGM-5 コーポラルは、アメリカ合衆国が開発した短距離弾道ミサイルです。アメリカ陸軍およびイギリス陸軍で運用され、アメリカ初の制式採用核弾頭搭載誘導兵器という歴史的意義を持ちます。最大射程約140kmで、核弾頭または高性能炸薬弾頭を装備可能でした。1964年まで運用され、その後MGM-29サージェントミサイルに更新されました。

開発の歴史

コーポラルの開発は、第二次世界大戦後のアメリカ陸軍によって進められました。ドイツのV2ロケット技術の知見を基に、ニューメキシコ州ホワイトサンズ性能試験場で開発されました。初期の開発は、ファイアストン・タイヤ・アンド・ラバー社、ギルフィラン・ブラザーズ社、ダグラス・エアクラフト社、そしてカリフォルニア工科大学ジェット推進研究所（JPL）の協力の下で行われました。

初期の研究段階では、"プライベートA/F"と呼ばれる試験ロケットが開発されました。プライベートAはアメリカ初の多段式ロケットでしたが、未熟なものでした。その後、プライベートFは翼を持つ弾道ミサイルの安定性維持に誘導装置が必要であることを実証しました。

気象観測ロケットであるWACコーポラル（Without Altitude Controlの略）の開発も重要な役割を果たしました。WACコーポラルA/Bは、ノーズコーン分離による観測データ回収システムを初めて搭載するなど、技術革新を遂げました。WACコーポラルBは、後にRTV-G-4バンパーという2段式ロケットにも用いられ、ドイツ製のV2ロケットと組み合わせられました。

コーポラルEは地対地ミサイルとしての試験機で、1947年に初飛行を行い、誘導弾道ミサイル技術の基礎を築きました。1950年には戦術核兵器への発展が承認され、SSM-G-17と命名されました。その後、命名規則変更によりSSM-A-17、そして最終的にMGM-5に改称されました。

ダグラス・エアクラフトが初期の試作機を製造した後、1951年にはファイアストンが量産契約を獲得しました。1952年にはSSM-A-17（コーポラルI）が初飛行し、1954年にはアメリカ陸軍初のコーポラル部隊が編成されました。

コーポラルの性能と問題点

最前線配備の核兵器にも関わらず、コーポラルは信頼性と精度に問題を抱えていました。赤煙硝酸とヒドラジンを推進剤とする液体燃料ロケットは、危険性が高く、発射準備に時間を要しました。誘導システムも第二次大戦時代の技術を改良したもので、複雑で整備が困難であり、電子妨害にも弱かったため、信頼性は50%以下でした。また、発射に必要な車両も多いことから、展開にも時間を要しました。

コーポラルII/IIa/IIbは信頼性を向上させましたが、液体燃料ロケットという根本的な問題点は解決されませんでした。

運用と配備

1945年には第1誘導ミサイル大隊が編成され、1952年には3個のコーポラル大隊が編成されました。1955年にはアメリカ陸軍の部隊がヨーロッパに配備され、イギリスにも提供されました。イギリスでは、スコットランドのサウス・ウイスト島に配備され運用されましたが、成功率は46%と低く、その運用能力に疑問符が付きました。

1958年にはコーポラルIIIの開発計画は、より進んだMGM-29サージェントの開発により中止されました。サージェントの配備開始後、コーポラルは1964年に運用を終了しました。

各型式

プライベートA/F：研究開発用試験ロケット
RTV-G-1 WACコーポラル：気象観測ロケット
RTV-G-2 コーポラルE：地対地誘導弾道ミサイル試験機
SSM-G-17/SSM-A-17 コーポラルI：初期型
XSSM-A-17a/XM2E1 コーポラルII：改良型
M2/MGM-5A コーポラルII：量産型
M2A1/MGM-5B コーポラルIIb：改良型
コーポラルIII：計画のみ

コーポラルII（MGM-5A）は、信頼性向上のためレーダー/無線装置が改良され、発射機も再設計されました。コーポラルIIb（MGM-5B）は、空気タービン交流発電機と取り外し可能なフィンを採用し、運用性を向上させました。

まとめ

MGM-5コーポラルは、アメリカ初の戦術核ミサイルとして歴史的意義を持つ一方、技術的課題を抱えていた兵器でした。その運用は短命に終わりましたが、後のミサイル開発に貴重な経験を提供しました。

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