MMRCA (航空機)

インド空軍 MMRCA (中型多目的戦闘機) 計画：次期主力戦闘機選定の軌跡

インド空軍（IAF）は、老朽化したMiG-21の後継となる多用途戦闘機を選定する「MMRCA (Medium Multi-Role Combat Aircraft)」計画を推進しました。この計画は、インド空軍の戦力維持・強化において重要な役割を担うものであり、世界中の航空機メーカーが参加する大規模なものでした。

計画の背景

インド空軍は、世界で4番目に大きな空軍力を有し、1,500機以上の航空機を運用しています。そのうち750機が戦闘機ですが、1980年代に導入されたミラージュ2000やMiG-29といった比較的新しい機種がある一方で、MiG-21などの旧式機は老朽化が進行していました。ソビエト連邦崩壊による部品供給の不安定化や、1990年代初頭の経済問題による予算制限も重なり、旧式機の稼働率は低下、機体の更新も滞りました。そのため、2014年1月時点でのインド空軍の運用能力は、必要な44個飛行隊に対し30個飛行隊にまで減少していました。この戦力低下を回復するため、MMRCA計画が始動しました。

計画の概要

インド空軍は、約126機の多用途戦闘機を導入する計画を立てました。総額55,000カロールルピー（約82億USドル）という巨額の予算が投じられる予定でした。当初の計画では、最初の18機を製造会社から直接購入し、残りの機体は技術移転を通じてインド国内のヒンドスタン航空機でライセンス生産される予定でした。

候補機と選定プロセス

MMRCA計画には、以下の6社が参加し、激しい競争を繰り広げました。

ダッソー・アビアシオン（フランス）：ラファール
ユーロファイター GmbH（欧州）：タイフーン
ロッキード・マーティン（アメリカ）：F-16IN スーパーヴァイパー
ボーイング（アメリカ）：F/A-18IN スーパーホーネット
サーブ AB（スウェーデン）：グリペンNG (IN)
RSK MiG（ロシア）：MiG-35

インド空軍は当初、カルギル戦争で活躍したダッソー社製のミラージュ2000の発展型であるミラージュ2000-5の導入を希望していましたが、ダッソー社がラファールの生産に注力していたため、ミラージュ2000-5は候補から外れました。選定プロセスは難航しましたが、2011年4月には、ユーロファイター タイフーンとダッソー ラファールの2機種に絞り込まれました。最終的に、2012年1月31日にラファールが選定され、ダッソー社の売り上げは100億ドルに達すると推定されました。

ラファール選定後の展開

ラファール選定後、フランスでの製造機数は36機に削減されました。これは、製造場所に関するインドとフランスの意見の相違が原因でした。インドは航空機製造のための技術導入を望んでいましたが、フランスは技術移転に消極的でした。2015年夏にインドは正式に契約しましたが、複数の関係者によると、将来的にはラファールの調達数を増やす必要があるとされています。

フランス政府は2010年以降、ラファールに搭載されたRBE2-AA AESAレーダーを含むラファールの全ての技術をインドに移転する事を明確にし、ソフトウェアのソースコードも必要であればインドの技術者が再プログラム出来る様に技術を移転するとしました。

2012年1月31日、ラファールはタイフーンに対して費用面で競り勝ち、独占交渉権を得ました。最初の18機以降はライセンス生産する予定でしたが、2015年4月にインドのナレンドラ・モディ首相はフランスで生産される36機を発注したことを明らかにしました。2020年7月29日に最初の5機が納入され、2021年末までに36機が揃う予定です。

並行する計画

MMRCA計画と並行して、以下の計画も進められています。

LCA (Light Combat Aircraft、軽戦闘機) - テジャス
AMCA (Advanced Medium Combat Aircraft、先進中型軍用機)
* FGFA (Fifth Generation Fighter Aircraft、第五世代戦闘機)

これらの計画は、インド空軍の戦力近代化に貢献することが期待されています。

まとめ

インド空軍のMMRCA計画は、次期主力戦闘機を選定する重要なプロジェクトでした。最終的にラファールが選定されましたが、技術移転の問題や製造場所を巡る意見の相違など、様々な課題がありました。ラファールの導入により、インド空軍の戦力は強化されることが期待されています。

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