Motion

Motion（モーション）：モーショングラフィックスとデジタル合成の強力なツール

Motionは、Appleが開発・販売しているmacOS向けのモーショングラフィックスおよびデジタル合成ソフトウェアです。特にFinal Cut Proとの連携を重視して設計されており、映像制作ワークフローを効率化する強力なツールとして位置づけられています。

歴史

Motionの起源は、2004年4月にデモンストレーションされたコードネーム「Molokini」というプロジェクトに遡ります。2005年4月には、NABのプレイベントでAppleのプロ向けアプリケーションスイートに加わりました。当初はPower Mac G5とMac OS X v10.4に最適化されていましたが、2006年1月に単体での販売は終了しました。しかし、2007年4月のNABにて、Motion 3がFinal Cut Studio 2スイートの一部として発表され、その後、Motion 4もFinal Cut Studio 3スイートに同梱されました。2011年6月21日には、Motion 5としてMac App Storeで単体販売が再開されています。

マーケットでの位置づけ

Motionは、モーショングラフィックスおよび映像コンポジットの分野で、Adobe After Effectsやディスクリート Combustionといった競合製品と並び称される存在です。バージョン3からは3Dコンポジット機能とモーショントラッキング機能が追加され、GPUアクセラレーションを最大限に活用した設計が特徴です。

主な機能と操作性

Motionは、パーティクルエフェクトやフィルタ処理をリアルタイムで処理することに重点を置いて設計されています。8ビットから32ビット浮動小数点の色深度までをGPUアクセラレーションで処理し、高速なパフォーマンスを実現しています。Motion 2からは、MIDIキーボードによるパラメータコントロールが可能になり、Motion 3では3D合成に対応しました。Motion 4では、影や反射などの表現が容易になり、シーケンステキスト機能とグリフ単位の編集機能が強化され、緻密なテキストアニメーションを効率的に作成できるようになりました。

ビヘイビア

Motionは、従来のキーフレームアニメーションに加え、オブジェクトの動きを簡単に設定できるビヘイビア機能を搭載しています。重力やスピンなど、様々な動きを容易に設定し、組み合わせることができます。例えば、フェードイン・フェードアウト処理をビヘイビアで指定することで、透明度のキーフレームを調整する手間を省き、柔軟な操作性を実現します。また、パラメータビヘイビアを使用すると、他のビヘイビアやフィルタのパラメータをランダム化したり、指定した範囲で往復させたりすることができます。さらに、Motionのビヘイビアはキーフレームに変換することも可能です。

リプリケーターとパーティクル・エミッター

リプリケーターとパーティクル・エミッターは、複雑な合成効果を比較的簡単に実現するための機能です。Motion 2で追加されたリプリケーター機能を使用すると、様々なオブジェクトを幾何学的に並べ、タイミングを設定してサイズやシェイプを動かすことができます。Motionのテンプレートには、トランジション・エフェクトパターンとして再利用可能なリプリケーターパターンが豊富に用意されています。パーティクル・エミッターは、雪や雨、煙、炎などの表現を可能にします。3D空間での表現効果も設定できます（ただし、合成される個々の要素自体は2D）。

HUD（ヘッドアップディスプレイ）

Motionでは、Appleの他のソフトウェアと同様に、HUDが採用されています。HUDを使用すると、選択中のオブジェクトの詳細情報を手軽に操作できます。インスペクタウィンドウでは、より詳細なパラメータ設定が可能ですが、HUDを使用すると、位置や角度などを直感的に調整できます。例えば、3D空間上での位置決めは、インスペクタ上の座標入力では直感的ではありませんが、HUD上のアイコンをドラッグすることで簡単に行えます。また、フェードイン・フェードアウトビヘイビアを選択すると、台形状のグラフとともにフレーム数を簡単に設定できるUIが表示されます。パーティクル・エミッターを選択すると、パーティクルの放出範囲と勢いを合成したUIをドラッグして設定できます。HUDは半透明で表示され、F7キーで表示/非表示を切り替えることができます。

プラグイン

Motionでは、多くのサードパーティー製のプラグイン（FxPlugプラグイン）が利用可能です。これらのプラグインを使用することで、Motionの機能を拡張できます。

Motionの動作

Motionは、AppleのCore Imageテクノロジを介してGPUのピクセルシェーダーを多用しています。Core ImageテクノロジはMac OS X Tigerから採用されており、これにより、多くのエフェクトを遅延なく処理できます。そのため、高性能なグラフィックスカードを選択することが推奨されます。Motionで採用されているApple独自のFxPlugプラグインアーキテクチャでも、GPUアクセラレーションが可能です。バージョン5.5からはApple M1に対応し、パフォーマンスと効率が向上しています。バージョン5.6では、Apple M1 Pro/Maxを搭載したMacBook Proでレンダリング速度や再生フレームレートが大幅に向上し、オブジェクトトラッカー機能が追加されました。

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