MYSTIQUE

『MYSTIQUE』 - 杏里の挑戦と魅力

1986年6月5日、日本の歌手杏里がリリースした『MYSTIQUE』は、彼女の9枚目のオリジナル・アルバムです。このアルバムは、前作『WAVE』から約1年ぶりの登場で、音楽ファンにとっても期待が高まる作品でした。特に、同日にリリースされたシングル『モーニング スコール』との連動性が感じられる、アルバムのテーマといえるでしょう。

『MYSTIQUE』は、エキゾティックなアジアンテイストを基にした楽曲で構成されており、夏の神秘的な雰囲気を伝えることを意図しています。このアルバムのタイトル「MYSTIQUE」は、まさにその神秘性を象徴した言葉で、多様な音楽スタイルを融合させたものとなっています。

杏里自身の音楽的な探求が色濃く反映されている本作では、これまでとは異なる作曲家や編曲家が起用されています。彼女は『月刊カドカワ』のインタビューで、これまでの音楽パートナーである角松敏生や小林信吾への依存から離れ、独立した音楽家としての一歩を踏み出したいという思いを語っています。この意欲的な姿勢が、新たな音楽的可能性を引き出しているのです。

特に注目すべきは、吉元由美が本作から作詞家として参加したことです。彼女は杏里の音楽キャリアにおいて、後に重要な役割を果たすことになります。また、鈴木茂も久々に編曲を担当し、名曲たちが生まれる背景に彼らの存在が不可欠でした。

『MYSTIQUE』に収録されている楽曲の多くは、後にリリースされる杏里のセルフカバーアルバムにはほとんど収録されていません。唯一「ALL OF YOU」は再録されていますが、それ以外は彼女の音楽の中で独自の地位を築くことになりました。このことは、彼女の音楽活動における進化を示すと同時に、彼女のファンにとっての特別な意義を持つ作品となっています。

さらに、2011年8月24日には、ブルースペックCDが紙ジャケット仕様でリリースされました。この際、シングル「モーニング スコール」のB面曲「EVENING RAIN」と、オリジナル・アルバム未収録のシングル「オリエンタル・ローズ」が新たに収録され、アルバムの魅力がさらに広がることとなりました。

全体として『MYSTIQUE』は、杏里の音楽的成長と探求心の証であり、彼女の独自性を発揮する重要な作品です。アジアンテイストの楽曲群が織りなす独特の雰囲気は、聴く者に新たな気付きを与え、その神秘的な世界観を心ゆくまで味わうことができます。これからも杏里の音楽やその進化を見守っていくことが、ファンにとっての楽しみとなるでしょう。

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