Mediator パターン
Mediator パターンとは
Mediatorパターンは、ソフトウェアデザインパターンの一つで、オブジェクト間の複雑な通信を中央で仲介する役割を担います。このパターンを用いることで、オブジェクト同士が直接的に通信するのではなく、Mediatorと呼ばれる仲介役を通して間接的に通信するようになります。これにより、オブジェクト間の依存関係を減らし、結合度を下げることが可能になり、システム全体の保守性や拡張性を向上させることができます。
Mediatorパターンの背景
ソフトウェア開発において、プログラムは通常、複数のクラスによって構成されます。これらのクラス間でロジックや計算が行われますが、クラスの数が増えるにつれて、クラス間の通信が複雑化し、プログラム全体の把握や保守が困難になるという問題が発生します。特に、あるクラスの変更が他のクラスに影響を与える可能性があるため、リファクタリングや機能追加が難しくなることがあります。
Mediatorパターンの解決策
Mediatorパターンは、このような問題を解決するために、オブジェクト間の通信をMediatorという単一の仲介オブジェクトに集約します。各オブジェクトはMediatorとだけ通信し、他のオブジェクトの存在や具体的な通信方法を知る必要がなくなります。これにより、オブジェクト間の依存関係が大幅に軽減され、プログラムの柔軟性と保守性が向上します。
Mediator パターンの構成要素
Mediatorパターンには、主に以下の4つの構成要素が登場します。
1. Mediator (仲介者、調停者)
- `Colleague`オブジェクト間の通信のインターフェースを定義します。
2. Colleague (同僚)
- オブジェクト間のコミュニケーションのインターフェースを定義します。Mediatorを通して他のColleagueと通信します。
3. ConcreteMediator (具体的な仲介者)
- `Mediator`インターフェースを実装し、`Colleague`オブジェクト間の通信を調整します。全ての`Colleague`オブジェクトの存在と、通信の目的について把握しています。
4. ConcreteColleague (具体的な同僚)
- `Mediator`を介して他の`Colleague`と通信します。直接的な通信は行いません。
Mediatorパターンの利点
- - 疎結合: オブジェクト間の直接的な依存関係を減らし、疎結合なシステムを構築できます。
- - 保守性の向上: 通信ロジックが一箇所に集約されるため、変更やデバッグが容易になります。
- - 再利用性の向上: MediatorとColleagueは独立しているため、それぞれの再利用性が高まります。
- - 柔軟性の向上: 新しいColleagueの追加や、既存のColleagueの変更が容易になります。
Mediatorパターンの適用例
- - チャットアプリケーションでのユーザー間のメッセージのやり取り
- - GUIアプリケーションでの複数のウィジェット間のイベント処理
- - フライトコントロールシステムでの航空機間の通信
まとめ
Mediatorパターンは、オブジェクト間の複雑な通信をシンプルにするための強力なツールです。このパターンを適切に活用することで、システム全体の保守性、拡張性、柔軟性を向上させることができます。GoFの23のデザインパターンの一つとして、多くのソフトウェア開発現場で利用されています。
関連項目
- - デザインパターン (ソフトウェア))
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