Model View Controller

Model-View-Controller (MVC)とは

Model-View-Controller（MVC）は、ソフトウェアアーキテクチャの一種であり、特にユーザーインターフェース（UI）を持つアプリケーションにおいて、その構造を整理し、開発を効率化するための設計パターンです。MVCは、ソフトウェアをModel（モデル）、View（ビュー）、Controller（コントローラ）の3つの要素に分割し、それぞれが異なる役割を担うことで、複雑なアプリケーションを理解しやすく、変更や拡張を容易にすることを目指します。

MVCの歴史

MVCの概念は、1979年にパロアルト研究所のトリグヴェ・リーンスカウクによって考案されました。当初はSmalltalk-80でのみ実装され、広く公開されることはありませんでした。1988年になって最初の論文が発表され、1994年にはデザインパターンの書籍で取り上げられることで、その存在が広く知られるようになりました。1999年には、JavaServer Pages Model 2としてサーバーサイド実装も登場し、GUIを持つソフトウェア開発において、その有用性から広く採用されるようになりました。

MVCの構造

MVCアーキテクチャは、以下の3つの主要な要素で構成されています。

Model（モデル）: アプリケーションが扱うデータと、そのデータを操作するビジネスロジックを表現します。たとえば、ショッピングカートの合計金額や送料を計算する処理などが該当します。モデルは、データの変更をビューに通知する役割も担います。この通知には、Observerパターンが用いられることもあります。

View（ビュー）: モデルからデータを受け取り、ユーザーが見やすい形で表示する役割を担います。ウェブアプリケーションでは、HTML文書を生成して動的にデータを表示するコードが該当します。GUIアプリケーションでは、通常、ビューは階層構造を形成します。

Controller（コントローラ）: ユーザーからの入力を受け取り、モデルのメソッドを呼び出してモデルの状態を変更する役割を担います。UIからの入力をモデルへのメッセージに変換し、モデルに伝えることで、ユーザーの操作に応じた処理を行います。コントローラは、直接描画を行ったり、モデルの内部データを操作したりはしません。

MVCのシナリオ

MVCの制御フローは、一般的に以下のようになります。

1. コントローラが、マウスやキーボードなどの入力機器を監視します。
2. ユーザーが入力機器を操作し、入力を与えます。
3. コントローラはユーザーのアクションに応じてモデルのメソッドを呼び出し、モデルのデータを変更します。
4. モデルが変更された場合、自身が変更された旨をビューなどのオブザーバに通知します。
5. ビューは、モデルから関連するデータを取得し、表示を更新します。

実際には、ビューは階層構造を形成し、各ビューに対応するコントローラが存在します。そのため、ユーザーからの入力を処理する適切なコントローラを特定する必要があります。

MVCとデザインパターン

MVCは、単独のデザインパターンとして扱われることもありますが、実際にはObserverパターン、Commandパターン、Factory Methodパターン、Facadeパターンなど、様々なデザインパターンを組み合わせて実装されることが多いです。そのため、デザインパターンというより、より大きな粒度のソフトウェアアーキテクチャと捉えるのが適切でしょう。

MVCの利点

MVCアーキテクチャの利点として、以下の点が挙げられます。

各モジュールが明確に分離されるため、プログラムの見通しが良くなります。
UI部分を他のモジュールと独立して変更できるため、保守性が向上します。
自動プログラミングなどの開発にも適しています。

MVCの課題

ビューとコントローラが密接に結びついているため、完全に分離することが難しい場合があります。
アプリケーションが複雑になるにつれて、モデル、ビュー、コントローラ間の関係が複雑になることがあります。

MVCの派生

MVCをベースとした、Model-View-ViewModel (MVVM) やModel-View-Presenter (MVP) など、様々なアーキテクチャパターンが派生しています。これらのパターンは、MVCの課題を解決するために、より柔軟な構造を提供します。

まとめ

MVCは、UIを持つアプリケーション開発において、その構造を明確にし、保守性と開発生産性を向上させるための強力なアーキテクチャです。しかし、MVCは万能ではなく、アプリケーションの規模や特性に応じて、適切なアーキテクチャを選択する必要があります。MVCを理解することは、現代的なソフトウェア開発において重要な基礎となります。

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