「Mystical glider」(ミスティカル・グライダー)は、日本の
ヴィジュアル系ロックバンド、
La'cryma Christiによって
2003年3月18日にリリースされた通算14枚目の
シングル作品です。彼らのキャリアにおいて、この
シングルは従来のメジャー流通ルートとは異なる、非常にユニークな形で世に送り出されました。
概要とリリース形態
本作の最大の特徴は、既存の
レコード会社流通網を介さず、バンド主導で制作・流通を行った完全な
自主制作盤であるという点です。これは当時の彼らの活動形態における新たな試みであり、ファンとの直接的な繋がりを重視する姿勢が強く反映されています。販売ルートは極めて限定されており、主に
La'cryma Christiが開催した
ライブハウスツアーの会場物販、およびバンドの公式ウェブサイトを通じた通信販売に限られていました。さらに、
ファンクラブ会員に対しては、直接電話での購入申し込みも受け付けるという、よりパーソナルな対応が取られていました。このような販売方式は、本作が文字通りファンに向けて限定的に提供された希少なリリースであったことを示しています。
制作背景とメンバーの関与
制作過程においても、「Mystical glider」は通常とは異なるアプローチが取られました。特に注目すべきは、バンドのギタリストであるKOJIが、本作においてエンジニアリングの役割を担っている点です。彼はプレイヤーとして楽曲演奏にほとんど参加しておらず、サウンドメイキングの技術的な側面に深く関与しました。メンバー自身がサウンドプロダクションの核に携わることで、外部エンジニアに委ねる場合とは異なる、よりバンド内部からの直接的な音作りや、特定のサウンドイメージへのこだわりが反映されたと考えられます。また、録音場所に関しても、一般的な商業レコーディングスタジオではなく、ライブスタジオが選ばれました。これは、スタジオならではの緻密さに加え、生演奏に近い臨場感や独特の空気感をサウンドに吹き込むことを意図していた可能性があります。慣れ親しんだライブ空間での録音が、メンバーの演奏表現にも自然な影響を与えたかもしれません。
収録曲
この
シングルには、以下の3曲とそのインストゥルメンタル版が収録されています。作詞はすべてTAKA、作曲はHIROまたはKOJIが手掛けています。
Mystical Glider
作詞:TAKA / 作曲:HIRO
本作のタイトルを冠する楽曲。
Drying heaven
作詞:TAKA / 作曲:HIRO
カップリング曲の一つ。
animism
作詞:TAKA / 作曲:KOJI
カップリング曲の一つ。KOJIが作曲を手掛けた楽曲。
Mystical Glider (un-vocal)
Drying heaven (un-vocal)
animism (un-vocal)
全ての収録曲について、ボーカルなしのカラオケバージョンが収録されており、リスナーは各楽曲のインストゥルメンタル部分を詳細に楽しむことができます。
アルバム収録
シングル表題曲である「Mystical Glider」は、後にリリースされた
La'cryma Christiのアルバム『
DEEP SPACE SYNDICATE』に収録されています。これにより、限定販売であったこの楽曲が、より多くのリスナーに届けられる機会が生まれました。他の収録曲がアルバムに収録されたかどうかは明確ではありません。
「Mystical glider」は、
La'cryma Christiがメジャーシーンでの活動を続けつつも、自主的な制作・販売ルートを模索し、サウンドプロダクションにおいて新たな試みを行った時期の貴重な記録と言えるでしょう。限定された方法でファンに届けられたこの
シングルは、当時のバンドの活動方針やメンバーのクリエイティブな関与の深さを物語る、重要な作品の一つです。