NAVY BLUE (Charの曲)

NAVY BLUE（ネイビー・ブルー）

「NAVY BLUE」は、日本の音楽シーンにおいてギタリストとしてだけでなく、ソロアーティストとしても確固たる地位を築いたCharが、そのソロ名義でのキャリアを正式にスタートさせた、記念すべき第一弾シングルとして発表されました。1976年にリリースされたこの作品は、後の彼の多岐にわたる音楽活動の礎を築く、まさに記念碑的作品と言えるでしょう。

このシングルの表題曲である「NAVY BLUE」は、Char自身が作曲と編曲を手掛けていますが、歌詞の部分では意外なコラボレーションが実現しています。作詞を担当したのは、当時フォークグループとして人気を博していたNSPのメンバー、天野滋です。叙情的で繊細な言葉選びに定評のある天野滋と、ロックギタリストとしてその才能を既に知られ始めていたCharという、一見異質な組み合わせは、リリース当時、多くの音楽ファンの耳目を集めたことでしょう。この共同作業によって生まれた楽曲が、Charのソロデビューを飾る選択肢となったことは、彼の音楽性が単なるギタープレイに留まらない、多様な可能性を秘めていたことを示唆しているかのようです。

シングルには、表題曲「NAVY BLUE」に加え、カップリングとして「SHININ' YOU, SHININ' DAY」が収録されています。こちらは、作詞、作曲、そして編曲の全てをChar自身が手掛けています。文字通り、アーティストChar自身の内面世界や音楽観がよりダイレクトに反映された楽曲と言えるでしょう。自身のギターテクニックはもちろんのこと、ソングライターとしての才能も遺憾なく発揮されたこの楽曲は、Charというアーティストが単なるプレイヤーではなく、トータルな音楽プロデューサーとしての才覚も持ち合わせていることを早期に示唆する重要な一曲と言えます。表題曲が外部の作詞家とのコラボレーションであるのに対し、カップリング曲で自身の全てを表現しているという対比も、このシングルの構成における興味深い点です。

このシングルの視覚的な側面も特筆に値します。ジャケットデザインは、楽曲タイトルである「NAVY BLUE」（ネイビー・ブルー、すなわち紺色）とは全く異なる、鮮やかで暖かみのあるオレンジ色が基調となっています。クールで落ち着いた印象を与える「紺色」という言葉から想像される一般的なイメージとは対照的なこの色彩選択は、アートワークを見た人々に強いインパクトを与え、楽曲への興味を掻き立てる効果があったと考えられます。ジャケットの色が楽曲タイトルと異なるという事実は、単なるデザイン上の選択に留まらず、もしかすると、Charの音楽性やソロアーティストとしての姿勢が、固定観念にとらわれない自由なものであることを象徴していたのかもしれません。このように、音だけでなく視覚的な要素においても、このデビューシングルは多くの話題を提供しました。

1976年という年は、日本のポピュラー音楽シーンにおいても様々な動きがあった時代です。Charがこの年にソロ活動を開始したことは、当時の音楽の流れの中で新たな才能が登場した出来事として記憶されています。このシングルは、NSPの天野滋とのコラボレーションという点でも、当時の音楽界におけるジャンルを超えた交流の一例として挙げることができます。フォーク、ロックといった既存の枠にとらわれない音楽制作への意欲が、彼のデビュー作から既に表れていたと言えるでしょう。

「NAVY BLUE」は、Charの輝かしいソロキャリアのまさに第一歩を記したシングルです。この一枚を通じて、彼はギタリストとしての卓越した技量だけでなく、ソングライター、そして表現者としての多様な才能を世に示しました。外部の才能との協働と、自身のセルフプロデュース能力、そして視覚的なアートワークに至るまで、アーティストとしての総合的なプロデュース力が垣間見えるこのデビューシングルは、その後のCharの音楽人生を予感させる、非常に重要な作品と言えるでしょう。彼の長いキャリアを振り返る上で、「NAVY BLUE」は常にその始まりを飾る、特別な意味を持つ楽曲であり続けます。

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