NB-36H

NB-36Hについて

NB-36Hは、アメリカ合衆国が1950年代に開発した試験用航空機であり、通称「クルセイダー」と呼ばれています。この機体は、コンベア社が開発した大型戦略爆撃機B-36Hを改造して製造され、最初は仮制式名称「XB-36H」と名付けられましたが、最終的に「NB-36H」として正式に制式化されました。

概要

NB-36Hは、航空機に原子炉を搭載し、放射線に対する遮蔽の実験や、放射線が電気回路に与える影響を調査する目的で製作されました。このプロジェクトは、「WS-125」（Weapon System 125）と呼ばれる原子力推進爆撃機計画の初期段階として位置づけられています。研究にはアメリカ空軍やコンベア社が関与し、その成果を基にして、後続の原子力推進試験機であるX-6の開発が計画されていました。X-6はGE社による原子力ターボジェットエンジン「P-1」を搭載する予定でした。これは、原子炉から発生する高温の空気を使って推力を生む設計でした。

NB-36Hは、原子炉を実際に稼働させつつ、飛行中の影響を調査することが狙いでした。原子力推進航空機の実用化が予想されていたものの、実際には排気が放射能汚染されるリスクが高く、構造的な課題から実用化は難しいとされました。そして1961年、ケネディ政権の誕生とともに原子力爆撃機計画は中止されましたが、NB-36Hは航空機に原子炉が搭載されたアメリカの歴史において初めての事例です。

開発背景

NB-36Hの製造は「MX1589計画」として1951年に始まりました。飛行機の改造には、B-36Hの爆弾倉にP-1型原子炉を搭載する作業がありました。改造につれて、機首部分の修理や防護シールドの設置が施されており、特に操縦席には水タンクを用いた放射線防御が施されました。そのため、操縦カプセルは非常に重量がありました。

この改造により、初の原子炉を搭載する戦略爆撃機が誕生しました。NB-36Hには、35,000ポンド（約16,000kg）で1メガワットを出力する原子炉が搭載されており、爆弾倉の中央部に設置されています。原子炉から発生した熱は冷却水を通じて大気に放出される仕組みであり、駆動力としては使用されませんでした。すべての改造は、放射線の影響を調べるために設計されていたのです。

NB-36Hは1955年から1957年にかけて47回に及ぶ飛行試験を実施しました。その際、放射線を測定するために、ボーイングB-50やC-119輸送機が随行しました。実験後は、コンベア社の工場で原子炉が検査されるなど、厳重な管理のもとで運用されました。最終的に、1958年に解体されることになります。

その他の国の取り組み

冷戦時代のソビエト連邦も、原子力推進航空機の開発に挑戦しました。ツポレフTu-95戦略爆撃機に搭載されたTu-119がその一例ですが、こちらもNB-36Hと同様に計画は途中で中止となりました。

要目

• - 翼長: 230 ft (70.104 m)
• - 全長: 162 ft 1 in (49.38 m)
• - 全高: 46 ft 8 in (14.23 m)
• - 最大離陸重量: 357,500 lbs (162,305 kg)
• - エンジン:

- Pratt & Whitney R-4360-53 28気筒空冷星型レシプロエンジン（出力 3,800 hp(2,830 kW)）×6基
- General Electric J47-GE-19 ターボジェットエンジン（推力 5,200 lbs）×4基

• - 最大速度: 420 mph (676 km/h)
• - 巡航速度: 270 mph (430 km/h)
• - 実用上昇限度: 40,000 ft (12,200 m)
• - 乗員: 5名

NB-36Hは、原子力の未来を探るための重要な一歩でしたが、その実用化は予期されたほどには進展しませんでした。

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