NCS (表色系)

NCS表色系：色の知覚に基づく体系的な表現

NCS（ナチュラルカラーシステム、Natural Color System）は、色の見え方を基にした表色系です。正式名称はナチュラルカラーシステムで、NCS表色系とも呼ばれます。人間の色の知覚を重視する「顕色系」に分類され、赤、黄、緑、青、白、黒の6色を基本色として、それらの組み合わせで様々な色を表現する点が特徴です。

基本概念

NCSは、ヘリングの反対色説に着想を得ています。基本色以外の色は、これらの基本色の配合比率で表されます。例えば、ピンクは白と赤の組み合わせ、茶色は白、黒、赤、黄の組み合わせで表現されます。この配合比率は、心理的・知覚的な数値で示されます。

この体系は、色の組み合わせという直感的な理解を容易にする利点があります。しかし、数値表記がやや複雑で、色票なしでは色のイメージが掴みにくいという欠点も指摘されています。明度や彩度といった概念は直接的には用いられず、代わりに黒色度、白色度、純色度を用いて色の特性を表現します。

歴史と開発

NCSは1981年に完成しました。最初のバージョンは、スウェーデンの心理学者のトリグヴェ・ヨハンソンとスヴェン・ヘッセルグレンらが中心となり、色の心理的な尺度を表現するという理念に基づいて開発されました。現在のバージョンは、アンダース・ハード、グンナー・トンクイスト、ラース・シヴィクらのスウェーデン人研究者によって開発され、この研究は1997年に国際色彩学会（AIC）のジャッド賞を受賞しました。

1979年には色票「カラーアトラス」が発行され、1990年にはスウェーデン工業規格（SIS）に採用されました。その後、ノルウェーやスペインでも規格として取り入れられ、ヨーロッパを中心に広く普及しています。

色相

NCSでは、赤（R）、黄（Y）、緑（G）、青（B）、白（W）、黒（S）の6色を基本色とします。有彩色4色（赤、黄、緑、青）は、隣り合う色相の間に9色の中間色が配置され、色相環を形成します。例えば、赤と黄の間には、Y20R、Y40R、Y60Rといった9色の中間色が存在し、それぞれの表記は、数値両側の色の割合を示します。「Y20R」は、黄：赤＝80％：20％であることを意味します。

黒色度、白色度、純色度

NCSの色空間は、黒色度（blackness、s）、白色度（whiteness、w）、純色度（chromaticness、c）の3つの要素で定義されます。等色相面は、黒色度と白色度を底辺、純色度を頂角とする二等辺三角形となります。黒色度と白色度は、それぞれ「理想的な黒（白）への類似度」を示し、純色度は「理想的な色への類似度」を示します。マンセル表色系やPCCSのような明度・彩度の概念とは異なりますが、黒色度は明度、純色度は彩度に類似した役割を果たします。黒色度、白色度、純色度の総和は常に100となります。

NCSの色立体は、オストワルト表色系と似た上下対称の二重円錐形をしています。純色、黒色、白色の混色という考え方もオストワルト表色系と共通しており、NCSはオストワルト表色系の後継とも言われています。

色の表記方法

NCSの色は、「S 黒色度 純色度 - 色相」という形式で表記されます（SはStandardの頭文字）。白色度は、黒色度と純色度から計算できるため、通常は表記されません。純色（フルクロマチックカラー）の場合は、「S C - 色相」（Cはchromaticness）と表記され、無彩色の場合は「S 黒色度 00 - N」（Nは無彩色）と表記されます。

例えば、黒色度が30、純色度が50で、色相が赤の場合、「S 30 50 - R」と表記されます。

まとめ

NCSは、人間の色の知覚を重視した、直感的で体系的な表色系です。複雑な数値表記を克服する必要はありますが、建築、デザイン、印刷などの分野で、色の正確な表現と管理に広く活用されています。

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