NGC 1275

NGC 1275、別名Caldwell 24は、ペルセウス座の方向に約2億3700万光年の距離に位置する、1.5型のセイファート銀河です。この銀河は、電波銀河ペルセウス座Aに対応しており、巨大なペルセウス座銀河団の中心付近に存在します。NGC 1275は、その特異な構造と活動的な中心核によって、天文学的な観測対象として重要な位置を占めています。

ダイナミクス

NGC 1275は、実際には二つの銀河が重なり合って見える複合銀河です。その一つは、ペルセウス座銀河団の中心に位置する巨大なcD型銀河であり、もう一つはその前面に存在する「高速システム」（HVS）と呼ばれるものです。このHVSは、約3000km/sという驚異的な速度でペルセウス座銀河団の中心に向かって移動しており、将来的にcD型銀河と融合すると考えられています。興味深いことに、HVSとcD型銀河は少なくとも20万光年離れており、現時点では重力的な相互作用はほとんどありません。

銀河団の中心に位置するcD型銀河は、質量を持つスペクトル線放出フィラメントのネットワークを形成しており、活動銀河核から放出される相対論的なプラズマの泡に引きずられているような様子が見られます。これらの細長いガスのフィラメントは銀河の境界を超えて広がり、銀河団内のX線放射ガスで満たされた空間を形成しています。一つのフィラメントに含まれるガスの質量は、太陽の約100万倍にも達します。これらのフィラメントは幅がわずか200光年と非常に細く、直線的に2万光年にもわたって伸びているのが特徴です。

フィラメントの謎

これらのフィラメントの存在は、天文学者に新たな疑問を投げかけています。フィラメントを構成するガスは、周囲の銀河間ガスに比べてはるかに低温であるにも関わらず、なぜ1億年以上もの間、その構造を維持できているのでしょうか？ 一つの可能性として、地球の磁場の約1万分の1程度の弱い磁場が、フィラメント中のイオンを維持するのに十分なエネルギーを与えているという説が提唱されています。この磁場の存在が、フィラメントの長期的な安定に不可欠な役割を果たしていると考えられています。

観測と研究

NGC 1275は、その特異な性質から、様々な波長での観測が行われてきました。X線観測では、活動銀河核からの高エネルギー放射や銀河団内の高温ガスが観測され、電波観測では、相対論的なプラズマジェットや銀河間空間に広がるガスの分布が明らかになっています。また、可視光観測では、特徴的なガスフィラメントや銀河の構造が捉えられています。これらの観測結果は、NGC 1275が銀河の進化や銀河団における銀河の相互作用を理解する上で、非常に重要な役割を果たすことを示唆しています。

出典

NGC 1275 - Wikisky: DSS2、SDSS、GALEX、IRAS、Hα、X線、天体写真、天体地図、記事と写真
APOD (2003-05-05) - NASA image & description
APOD (2005-07-25) - NASA image showing unusual gas filaments
Fabian, A.C., et al. "A deep Chandra observation of the Perseus cluster: shocks and ripples". Monthly Notices of the Royal Astronomical Society. Vol. 344 (2003): L43 (arXiv:astro-ph/0306036v2).
Fabian, A.C. Nature 454, 968-970.
cosmotography.com - An image made with a 20" telescope, which displays the unusual gas filaments

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