NGC 663

NGC663

NGC663は、別名Caldwell 10やMelotte 11としても知られる、カシオペヤ座の領域に位置する美しい若い散開星団です。地球からは約2100パーセク（およそ6800光年）の距離にあり、比較的手頃な観測対象となっています。

概要と観測

この星団は、およそ400個の恒星が集まっており、地球から見た視直径は約0.25度に及びます。全体としての見かけの明るさ（視等級）は7.1とされていますが、一部にはより明るいと評価する見方もあります。観測について言えば、条件が良ければ裸眼でも捉えられたとする報告がありますが、その詳細な姿を観察するにはやはり望遠鏡が不可欠です。ただし、星団の中でも特に明るい星であれば、双眼鏡を用いるだけでもその存在を確認できます。

物理的性質

NGC663までの距離は、星間物質による光の吸収や散乱（赤方偏移）の影響を補正した上で、約2100パーセクと推定されています。この距離計算には、距離係数11.6という値が用いられます。星団の年齢は比較的若く、およそ2000万年から2500万年の間と見積もられています。この年齢は、星団に含まれる比較的重い恒星、特にスペクトル型がB2よりも高温な星々が、まさに主系列星としての生涯の終わりに近づいている段階にあることを示唆しています。

興味深いことに、NGC663は天球上で巨大な分子雲のすぐ手前に位置しているように見えますが、実際には両者の間に物理的な結びつきはありません。この分子雲はNGC663よりも約300パーセク（約1000光年）ほど遠方にあり、さらにその後ろから届く遥かな光を一部遮る役割を果たしています。

特徴的な天体

NGC663が多くの研究者の関心を引く理由の一つは、その構成星の中にBe星が豊富に含まれていることです。これまでに約24個のBe星がこの星団内で確認されています。Be星とは、スペクトル型がB型（表面温度が高い恒星）でありながら、通常は見られない水素の輝線スペクトルを示す恒星のクラスです。これは、恒星の赤道付近から物質が放出され、円盤状のガスを形成しているために起こると考えられています。NGC663で見つかるBe星の大部分は、スペクトル型がB0からB3の範囲に属しています。

特筆すべきBe星としては、LS I +61° 235が挙げられます。この星は、約3年の周期で変動するX線源を伴う連星系の一部であると考えられており、特異な物理現象が起きている可能性があります。

さらに、星団の進化を理解する上で重要な存在である青色はぐれ星も、少なくとも5個発見されています。これらの星は、本来であればその質量と年齢から予測されるよりも高温で明るいという特徴を持ちます。現在のところ、青色はぐれ星は主に二つの恒星が衝突・合体する、あるいは連星系内での質量移動といったダイナミックな相互作用を経て形成されると考えられています。

星団内には、光度の周期的な変化を示す食連星の系も含まれています。具体的には、周期約0.6日と約1.03日の二つの食連星系が確認されています。また、星団の比較的外側には、恒星進化の最終段階にある赤色超巨星が二つ存在していることも特筆すべき点です。

周辺環境との関連

NGC663は、単独で存在するのではなく、周辺の他の散開星団（例えばM103、NGC 654、NGC 659）や、その間に広く分布する特に明るい超巨星たちと共に、銀河系のペルセウス腕に位置する巨大な星形成領域であるアソシエーション カシオペヤ座OB8の一部を構成していると考えられています。これらの天体群は、いずれも非常に近い年齢と距離を持つことから、共通の起源を持つ可能性が示唆されています。

NGC663は、その年齢構成と多様な特異星の存在から、散開星団の形成や進化、さらには大質量星の生涯に関する研究において重要な観測対象となっています。

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