分子雲

分子雲とは

分子雲（molecular cloud）または星間分子雲（interstellar molecular cloud）とは、宇宙空間に存在するガス雲の一種で、主成分が水素分子（H2）であるものを指します。これらの雲は非常に低温で高密度であり、星が誕生するための重要な場所となっています。特に密度が高い領域は分子雲コアと呼ばれ、ここがまさに星のゆりかごとなるのです。

分子雲の観測

分子雲は非常に低温（約10K）であるため、主成分である水素分子は電磁波を放射しません。そのため、直接観測することが難しいのです。そこで、観測には水素分子に次いで存在量の多い一酸化炭素分子（CO）が用いられます。天の川銀河内では、COの光度とH2の質量比が一定と仮定されており、これを利用して分子雲の質量を推定します。

分子雲の起源と分布

銀河系において、分子ガスは星間物質全体の1%にも満たない体積しか占めていませんが、太陽系の軌道の内側にある領域の質量のおよそ半分を占めるほど高密度です。分子ガスは、銀河の中心から3.5〜7.5キロパーセクの距離に環状に広がっており、銀河の渦状腕に沿って分布しています。分子雲の多くは渦状腕を通過する時間である1000万年ほどの間に形成されると考えられています。

分子雲は銀河のディスク面から垂直方向に約50〜75パーセクの範囲に分布しており、熱い原子ガスやイオンガスよりも狭い範囲に存在します。分子雲の分布は、全体的に見ると平均的ですが、詳細に見ると非常に不規則です。太陽近傍の分子雲は大きく見えるため、オリオン座分子[[雲]]やおうし座分子雲のように星座の名前で呼ばれることもあります。これらの分子雲はグールド・ベルトと呼ばれる環状構造に配置されています。また、銀河中心の周りには半径約200〜300パーセクの分子ガス環があり、その中にはいて座B2という巨大分子雲複合体が存在します。

分子雲の種類

分子雲は、その質量や特徴によっていくつかのタイプに分類されます。

暗黒星雲: 10^4太陽質量未満の質量の分子雲です。ここでは小質量の星が形成されます。
巨大分子雲: 10^4太陽質量以上の質量を持つ分子雲です。小質量星だけでなく、中質量星や大質量星も形成されます。
分子雲コア: 分子雲内部の高密度領域で、温度は約10K、直径は約0.1パーセク、質量は10太陽質量程度です。水素分子の密度は非常に高く、背景の光を遮って暗黒星雲のように見えます。
グロビュール: 周囲の分子雲から孤立した小型の分子雲で、ボック・グロビュールと呼ばれる大型のものの中には星形成を行うものもあります。
* 高緯度拡散分子雲: 銀河座標の高緯度領域に繊維状に分布する分子雲で、密度は比較的低いです。

分子雲と星形成

星は分子雲の中で形成されると考えられています。分子雲内部では、低温と高密度の条件下で重力が内部圧力を上回り、雲が収縮することで星が誕生します。分子雲は外部からの圧力ではなく、自身の重力によってまとまっており、数百万年から数千万年の間に星を作り続けるとされています。

分子雲の物理学

分子雲の内部運動は、低温で磁性を持つガスの乱流によって支配されています。乱流は超音速で磁場の擾乱と匹敵するほど激しいものであり、エネルギーを急速に失いますが、何らかのエネルギー注入がないと雲は崩壊すると考えられています。また、巨大分子雲は内部にメーザーを含むことがあります。

まとめ

分子雲は星の誕生の場として非常に重要な役割を果たしています。分子雲の研究は、宇宙における星形成のメカニズムを解明する上で不可欠です。その内部構造や物理的な性質はまだ完全に解明されていませんが、観測技術の進歩とともに、新たな発見が期待されています。

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