NHKメディアテクノロジー

株式会社NHKメディアテクノロジー

株式会社NHKメディアテクノロジー、通称NHK-MTは、日本の公共放送である日本放送協会（NHK）の機能子会社として、放送技術の企画開発やNHK内部の情報システム構築・運用などを担っていた企業です。NHKグループにおける技術部門の中核企業として、多岐にわたる業務を遂行していましたが、2019年4月1日、同じくNHKの技術系子会社であったNHKアイテックとの統合に伴い、その役割を終え解散しました。

設立の経緯

NHK-MTは、2008年に設立されました。その前身は、1984年設立のNHKテクニカルサービス（NTS）と、1985年設立のNHKコンピューターサービス（NCS）です。NTSは主に番組の制作や送出に関わる技術業務を、NCSは放送システムの開発や保守運用を担っており、それぞれ異なる技術分野を専門とする子会社でした。両社が統合された背景には、インターネットの普及などに伴う放送と通信の融合（メディア技術）の開発を加速させたいというNHKの意向がありました。

組織と役割

統合後のNHK-MTでは、旧NTSの組織が「放送技術本部」として、旧NCSの組織が「情報システム本部」として再編成されました。旧NTSが持っていた地方の支社や事業所は「地域センター」として引き継がれました。設立の主目的であったメディア技術の研究開発は、「アドバンスドメディアセンター」が担当し、データ放送やNHK Hybridcast（ハイブリッドキャスト）などの先進技術開発を推進しました。このセンターには、放送技術と情報システム技術、双方の専門知識を持つ技術者が集められました。NHKグループ内での位置づけとしては、放送所の設備や各種機材といったハードウェア関連技術をNHKアイテックが担当する一方、NHK-MTは番組制作・送出技術や情報システム関連といったソフトウェアやコンテンツ寄りの技術を担当するという明確な役割分担がなされていました。その使命は、「高度な技術力でNHKの放送活動を支え、番組制作と送出を安定的に継続すること」にありました。

主な事業内容

NHK-MTの事業は非常に幅広く、多岐にわたる技術サービスを提供していました。主要な事業としては、NHKからの委託を受けて行う放送番組の送出・制作に関わる技術業務、そしてNHK内部や関連組織の情報システムに関するコンサルティングから企画、設計、開発、運用、保守、教育までの一連のサービス提供が挙げられます。

具体的な業務内容には、高精細度テレビ放送である4K・8Kコンテンツの番組制作技術の提供、完成した番組の送出システム運用や放送運行のサポート、国際的なスポーツイベントでの国際信号対応などが含まれます。また、3D技術を応用した情報システムの設計・開発や、様々なメディア形式間での変換作業、さらには関連するパッケージ製品の販売なども行っていました。スポーツ中継をはじめとする各種イベントの中継業務もNHK-MTの重要な役割であり、大相撲やプロ野球、Jリーグ、オリンピックなどのスポーツ競技、宝くじ抽選会、おでかけライブなど、数多くの生中継現場でその技術が活用されていました。

担当番組（2018年度現在の一部）

NHKメディアテクノロジーは、NHKの多岐にわたる番組制作や送出技術に貢献していました。以下は、2018年度時点で技術を担当していた主な番組の一部です。

総合: あさイチ、NHKスペシャル、大河ドラマ、連続テレビ小説、クローズアップ現代＋、チコちゃんに叱られる！、NHK紅白歌合戦 など
Eテレ: いないいないばあっ！、おかあさんといっしょ、天才てれびくんYOU、ETV特集、香川照之の昆虫すごいぜ！、ねほりんぱほりん など
BS: アナザーストーリーズ 運命の分岐点、ワールドスポーツMLB、BS日本のうた など
ラジオ: ラジオ深夜便、NHKマイあさラジオ、今日は一日〇〇三昧 など

これらの番組以外にも、数多くの教養、バラエティー、ドラマ、報道番組、そしてスポーツ中継などで、NHK-MTの技術力が活かされていました。

そして解散へ

放送と情報システム技術の融合を掲げ、NHKの番組制作と運用を技術的に支えてきたNHKメディアテクノロジーでしたが、NHKグループ全体の組織再編の一環として、2019年4月1日付で、主に放送インフラを担当していたNHKアイテックと統合される形で解散しました。その機能と技術は、統合後の新たな組織に引き継がれています。

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