NHK人間大学

NHK人間大学

「NHK人間大学」（えぬえいちけいにんげんだいがく）は、日本の公共放送であるNHKが、その教育専門チャンネルであるNHK教育テレビ（現在のEテレ）を通じて視聴者に届けた、質の高い教養を提供するテレビ番組シリーズです。この番組は、1990年代の約7年間にわたる期間、具体的には1992年4月6日から1999年4月1日まで放送されました。

本番組は、それ以前に放送されていた「NHK市民大学」の流れを汲み、その後継番組として「NHK人間講座」へと続いていく、NHK教育テレビにおける看板的な生涯学習番組の一つとして位置づけられています。高度情報化社会の進展とともに、学校を卒業した後も学び続けることの重要性が認識され始めていた時代において、「NHK人間大学」は、テレビという誰もがアクセスしやすいメディアを通じて、学びの機会を提供しました。

「NHK人間大学」の最も際立った特徴は、各学術分野や専門領域の第一線で活躍する著名な研究者、評論家、芸術家といった識者を講師陣として迎えた点にあります。彼らは、自らの長年の研究や経験に裏打ちされた、最も得意とするテーマや専門分野について、視聴者に向けて講義を行いました。

講義は、単発ではなく、一つのテーマを掘り下げるために連続した回で構成され、原則として3か月にわたる期間をもって行われました。この連続講座という形式により、視聴者はテーマの概論から始めて、次第にその核心へと迫る、体系的な学びを深めることができました。これは、まるで大学の講義を自宅のリビングで受けるかのような体験であり、日頃触れる機会の少ない専門分野の知識や、講師独自の視点・思考法に触れる貴重な機会となりました。

番組で取り上げられたテーマは、歴史、哲学、文学、科学、芸術、社会問題など、人間の知的好奇心を刺激する幅広い領域に及びました。視聴者は、これらの講義を通じて、単に知識を増やすだけでなく、物事を多角的に捉える視点や、論理的に思考する力を養うことが期待されました。生涯学習の目的が単なる資格取得やスキルアップにとどまらず、人間的な成長や豊かな人生を送るための知的な糧を得ることにあるとするならば、「NHK人間大学」はまさにその目的を体現する番組であったと言えるでしょう。

番組作りにおいては、学習内容の質の高さに加え、文化的な側面にも配慮が見られました。例えば、番組のタイトルを揮毫した題字は、高名な書家である榊莫山氏の手によるものであり、番組に落ち着きと品格を与えていました。また、番組を彩るテーマ曲も、放送期間の途中（1996年）で変更があり、初期のMALTA氏による楽曲から、千住明氏による楽曲へと引き継がれました。こうした細部にわたるこだわりは、視聴者に学習意欲を喚起するだけでなく、番組全体の世界観を構築する上で重要な役割を果たしました。

NHK教育テレビは、生涯学習の推進を重要なミッションの一つとして掲げています。「NHK人間大学」は、そのミッションを具現化した番組であり、学校教育を終えた後も学び続けたいと願う、意欲ある幅広い層の視聴者に向けて制作されました。専門的な内容を分かりやすく伝える工夫が凝らされており、多くの人々が生涯学習の第一歩を踏み出すきっかけともなったと考えられます。

「NHK市民大学」から始まり、「NHK人間大学」を経て、「NHK人間講座」へと発展していったこのシリーズは、形を変えながらも、公共放送による生涯学習支援の取り組みとして重要な役割を担い続けています。関連番組として「知るを楽しむ」なども挙げられます。当時の放送の記録の一部は、現在、NHK放送史のデジタルアーカイブなどで見ることができます。

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