Nano (テキストエディタ)

nano (ナノ) について

nanoは、UNIX系システムを中心に利用される、cursesベースのテキストエディタです。CUI（キャラクターユーザインタフェース）環境で動作するスクリーンエディタであり、キーボード操作でテキスト編集を行います。

特徴

多くのスクリーンエディタが存在する中で、nanoの特筆すべき点は、その操作性の分かりやすさにあります。WYSIWYG（What You See Is What You Get）に慣れたユーザーでも比較的容易に扱えるため、初心者にも優しい設計となっています。

歴史

nanoの歴史は、1999年にChris Allegretta氏によって開発された「TIP (TIP Isn't Pico)」という名称のエディタに遡ります。これは、当時非フリーライセンスで配布されていたPicoというエディタの代替となるフリーソフトウェアとして開発されました。

2000年1月10日、名称が既存のUnixユーティリティ「tip」との競合を避けるため、「nano」に変更されました。その後、2001年2月にはGNUプロジェクトの一部となりました。

nanoはPicoにはない多くの機能を追加しており、シンタックスハイライト、行番号表示、正規表現を用いた検索・置換、行単位でのスクロール、複数バッファのサポート、グループ化された行ごとのインデント、カスタマイズ可能なキーバインド、編集のやり直し・取り消し機能などを備えています。

2003年8月11日、Chris Allegretta氏はnanoのソースコードのメンテナンスをDavid Lawrence Ramsey氏に委ねましたが、Ramsey氏は2007年12月20日にメンテナの立場を降りました。

2016年6月、nanoプロジェクトの主要な開発者たちは、FSF（自由ソフトウェア財団）の著作権譲渡ポリシーに対する意見の相違からGNUプロジェクトを離れることを決定しました。彼らは、分散型の著作権保持はGNU GPLの強化を妨げないと考えていました。この動きはDebianやArch Linuxなどのディストリビューションに受け入れられましたが、GNUプロジェクトはこれを「フォーク」とみなし、抵抗しました。

しかし、2016年8月19日、Chris Allegretta氏はGNUによるnanoに関する著作権譲歩を受け入れ、プロジェクトをGNUファミリーに戻すことを発表しました。その後、バージョン2.7.0が2016年9月にリリースされました。

ライセンス

nanoはGPL（GNU General Public License）のもとで配布されています。

使用上の特徴

nanoは、viなどのエディタとは異なり、起動後すぐにキーボードから文字入力が可能です。方向キーを使ってカーソルを自由に移動させることができます。

ファイルの読み書きや検索などのコマンドは、コントロールキーやメタキーとの組み合わせで実行しますが、画面下部に主要なキー割り当てが常に表示されているため、操作方法を知らないユーザーでも容易に利用できます。その他のキー割り当てについては、`^G`（ヘルプ）を押すことで確認できます。

最近の主要なLinuxディストリビューションやmacOSには標準で同梱されていますが、Emacsやvimといった高機能なエディタと比較すると、機能面では制約があります。

nanoの元となったPicoは、単一のファイルのみを編集できるシンプルなエディタでしたが、nanoでは機能が大幅に拡張され、バッファを切り替えて複数のファイルを編集したり、正規表現を利用した検索やシンタックスハイライトに対応するなど、必ずしも単純とは言えないエディタへと進化しています。

脚注

外部リンク

nano – Text editor 公式ウェブサイト

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