O・W・フィッシャー

O・W・フィッシャー

オーストリアの俳優、O・W・フィッシャーは、本名をオットー・ウィルヘルム・フィッシャーといい、1915年4月1日に現在のオーストリア、旧オーストリア＝ハンガリー帝国時代のクロスターノイブルクに生を受け、2004年1月29日にこの世を去りました。映画界と演劇界の両方で、長きにわたりその存在感を示した人物です。

生涯とキャリア

ウィーン大学で文学と歴史を修めた知的な背景を持ち、俳優としての道をマックス・ラインハルト演劇学校で学びました。彼の外見は、二枚目で精悍な顔立ち、そしてがっしりとした体格が特徴でした。この端正な容姿に加え、教養に裏打ちされた演技は観客を魅了し、多くの作品で主役を演じることになります。特に、その紳士的な雰囲気と深みのある演技は高く評価され、「ドイツのケーリー・グラント」という異名で親しまれました。

映画デビューは1936年の『ブルグ劇場』ですが、同時期から舞台俳優としても活動しました。1938年から1944年にかけては、当時ドイツ領となっていたウィーンのフォルクス劇場、そして第二次世界大戦終結後の1945年から1952年にかけては、ウィーンの由緒あるブルク劇場のメンバーとして舞台に立ちました。映画と舞台で精力的に活動した後、1970年代以降は主にテレビドラマへと活躍の場を移しました。

主な出演作と栄誉

O・W・フィッシャーのキャリアにおける特筆すべき出演作の一つに、1955年の旧西ドイツ映画『ルートヴィヒ2世 - ある王の栄光と没落』があります。この作品では、悲劇的な生涯を送ったバイエルン国王ルートヴィヒ2世を演じ、その熱演はドイツ映画賞主演男優賞の受賞へとつながりました。映画はルートヴィヒ2世ゆかりのノイシュヴァンシュタイン城など、史跡でのロケーション撮影も行われ、話題となりました。

1958年に出演した旧西ドイツ映画『Helden』（英語題：『Arms and the Man』）は、第31回アカデミー賞の外国語映画賞部門にノミネートされるという国際的な評価を得ました。この作品での演技により、彼は二度目となるドイツ映画賞主演男優賞を受賞しています。

同年、1958年8月には、旧西ドイツ映画『Peter Voss, der Millionendieb』の日本での撮影のために来日しました。ワルター・ギラーやイングリッド・アンドレといった共演者やスタッフと共に、総勢19名で東京国際空港（羽田）、椿山荘、上野東照宮といった日本の名所でロケを行いました。

1959年の映画『グランド・ホテル』では、ヴィッキイ・バウムの原作をもとにした、有名なハリウッド映画（1932年版、グレタ・ガルボ主演）のヨーロッパ版リメイクに出演し、フランスの人気女優ミシェル・モルガンと共演しています。

これらの輝かしい功績に対し、ドイツ連邦共和国功労勲章（大功労十字章）が授与されています。

彼の主な出演映画としては、上記の他、『ナポレオン』（1955年）、『大いなる不倫』（1957年）、『アンクル・トム』（1965年）などが挙げられます。

私生活と晩年

プライベートでは、1942年8月13日に女優のアンナと結婚しました。1960年代に入ると、夫妻はスイスのティチーノ州に移り住み、静かな生活を送りました。1985年に妻アンナと死別した後、約20年の歳月を経て、2004年1月29日にスイスのルガーノで、88歳でその生涯を閉じました。彼の訃報は日本を含む世界各国で報じられ、多くのファンがその死を悼みました。彼の墓所はルガーノ近郊にあります。

O・W・フィッシャーは、その多才な才能と魅力で、オーストリアおよびドイツ語圏の映画・演劇史に確固たる地位を築いた俳優でした。国際的な活躍や日本との縁も、彼のグローバルな存在感を物語っています。

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