上野東照宮

上野東照宮は、東京都台東区の上野恩賜公園内に位置する神社です。かつては府社であり、その豪華さから日光東照宮などと並び、三大東照宮の一つに数えられることもあります。正式名称は東照宮ですが、他の東照宮と区別するため、鎮座地名をつけて上野東照宮と呼ばれています。また、「三処権現」という別名も持ちます。

ご祭神

徳川家康（東照大権現）のほか、徳川吉宗、徳川慶喜を祀っています。創建当初は、東照神君（家康）、天海僧正、藤堂高虎が祀られていました。

歴史

寛永4年（1627年）、藤堂高虎によって上野の自身の敷地内に創建されました。社伝によると、元和2年（1616年）、家康が危篤の際、高虎と天海に自身の魂が末永く鎮まる場所を作るように遺言したとされています。

現在の社殿は、慶安4年（1651年）に家康の孫である徳川家光によって改築されたものです。慶応2年（1866年）には回廊が火災で焼失しましたが、上野戦争、関東大震災、第二次世界大戦といった数々の災禍を奇跡的に免れてきました。上野戦争では旧幕府軍の本陣が境内に置かれたにもかかわらず焼き討ちに遭わず、関東大震災では鳥居すら倒れませんでした。東京大空襲では焼夷弾が社殿脇に落ちましたが、不発弾だったため倒壊を免れました。

これらのことから、強運の神様として信仰を集め、家康を祭神としていることから、出世、勝利、健康長寿の神様としても崇められています。上野駅から徒歩5分というアクセスも魅力で、都内では珍しい江戸初期の建築物として、海外からの観光客にも人気があります。

社殿は金箔がふんだんに使われていることから「金色殿」と呼ばれています。重要文化財である社殿・唐門・透塀は、2009年から2013年まで修復工事が行われ、2014年から一般公開されています。500円の拝観料で透塀内を見学できますが、社殿内部は文化財保護のため非公開となっています。

施設

境内には、狸の木像をご神体とした栄誉権現社があり、「他抜（たぬき）」の御利益があるとされ、受験、就職、合格、当選を願う人々から人気を集めています。

2022年には、中村拓志氏の設計による神符授与所と静心所、御神木を中心とした祈りの庭や奥参道が完成しました。

1980年に開苑した境内のぼたん苑では、年間を通して牡丹の栽培が行われています。年に3回公開され、4月上旬から5月上旬には地植えの牡丹を中心とした「春のぼたん祭」、元日から2月下旬には冬に開花するよう促成栽培した冬牡丹を展示する「上野東照宮・冬ぼたん」が開催されます。9月下旬から10月下旬にはダリアの展示「ダリア綾なす秋の園」が開催されます。

併設する五重塔は、もとは東照宮に所属していましたが、明治の神仏分離令により寛永寺の所属となりました。しかし、寛永寺は上野戦争で焼失し、寺地の多くが公園用地として没収され、上野東照宮から離れた場所で再建されたため、五重塔は文化財管理の必要性から東京都に譲渡されました。現在は上野動物園内に位置していますが、五重塔の正面は東照宮の参道に面しています。

文化財

重要文化財として、以下のものが指定されています。

東照宮社殿（本殿・幣殿・拝殿）附：棟札4枚（慶安4年（1651年））
唐門
透塀
石造明神鳥居（寛永10年（1633年）酒井忠世寄進）
銅燈籠 50基（附指定）
紫地葵紋付桐文散辻が花染胴服

社殿、唐門、透塀は、いずれも創建当時の姿を今に伝えています。江戸初期の彫刻師、左甚五郎が手掛けた作品は、唐門の龍の彫刻4体のみとされています。門の内外に2体ずつ彫られた昇龍・降龍は、毎夜不忍池の水を飲みに行くという伝説があります。家康の「偉大な人ほど頭を垂れる」という教えから、頭が下を向いている方が昇り龍と呼ばれています。

透塀は、狩野派の絵師が下絵を描き、それを彫師が彫ったと伝えられています。透塀の彫刻は257枚あり、塀の上段には野山の植物や動物が、下段には海川の水の生き物が彫られています。

社殿は権現造で、正面手前に拝殿、奥に本殿があり、その間に石の間と呼ばれる幣殿があります。一段低くなったところで繋がった三室構造となっています。

外壁は復元時に塗り直されましたが、内壁には狩野探幽の障壁画がそのまま残されています。加筆すると文化財としての価値が損なわれるため、剥落止めを施す程度に留められており、創建当時の姿を見ることができます。

授与品

朱印や御守は多種あり、特に毎月17日だけに授与される「昇龍守」が有名です。隣接する上野動物園のパンダをモチーフにした「パンダの御守」、珍しい「他抜守」「印籠守」のほか、家康の強さにあやかる「強守」「勝守」も人気があります。朱印は通常の「上野東照宮」の朱印と狸の「他抜朱印」、月替わりの朱印、特別祭事を記念する限定朱印などがあります。

交通

JR東日本線（山手線・高崎線・常磐線・東北新幹線他）：上野駅公園口より徒歩5分
京成本線：京成上野駅池之端口より徒歩5分
* 地下鉄銀座線・地下鉄日比谷線：上野駅不忍口より徒歩10分

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