OCFフォント

OCFフォント（Original Composite Font）とは

OCFフォントは、かつてMacintosh（Mac OS 9まで）で利用されていた和文（2バイト文字）PostScriptフォントの一種です。複数の欧文用フォントファイルを積み重ねた構造を持つことが特徴で、DTP（デスクトップパブリッシング）の発展とともに普及し、一時代を築きました。

現在では、より進化したCIDフォントやOpenTypeフォントが主流となっていますが、印刷業界など一部の現場では根強く利用されています。名称にある「OCFフォント」という表現は、「Original Composite Font Font」となり、厳密には重複表現となります。

誕生の背景

PostScriptフォント（Type1、Type3）は、当初欧文を前提とした仕様であり、扱える文字数は256文字（1バイト）に制限されていました。しかし、日本語組版では常用漢字、仮名、記号など数千文字が必要となるため、複数のType1フォントを組み合わせた複合フォントとしてOCF形式が策定されました。

普及と現状

日本語DTPはOCFフォントによって幕を開けました。特にモリサワのフォントは、当初文字のアウトライン情報の抽出が不可能という仕様でしたが、これはコピープロテクトとアウトラインプロテクトが同一のプログラムとして提供されていたためです。後のNew-CIDでは、アウトライン抽出が可能になりました。

当初はモリサワのリュウミンと中ゴシックのみでしたが、次第に他社も参入し、ラインナップが増加。日本語DTPの標準として広く普及しました。

その後、データ構造を改善し軽量・高速化したCIDフォントが登場し、ベンダーはOCFフォントからの移行を推奨しました。しかし、交換手数料に見合うほどの利便性が得られないなどの理由から、OCFフォントは事実上の標準として生き残りました。

特に商業印刷の現場では、DTP導入時にOCFベースで安定させたシステムを、あえて変更する必要性を感じないユーザーが多く、既存のOCFフォントが使い続けられました。また、組版料金の低下という背景も影響し、経済的な理由からOCFフォントを選択するユーザーも存在しました。

後継規格への移行

現在、PostScriptフォントの主流はCIDフォントに移り、macOSではOCFフォントのインストールが不可能になっています。モリサワをはじめとする主要ベンダーは、OCFフォントの販売、サポート、新フォーマットへの交換を終了しており、新規入手は困難な状況です（フォントワークスのLETSプログラムなど一部例外あり）。

そのため、新たにDTP設備を導入する際は、必然的にCIDフォントやOpenTypeフォントが選択されます。規格が異なるとはいえ、運用上必要なPostScript名が一致していれば、注意を払うことで混用も可能です。

関連項目

PostScript
Adobe Font Metrics

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