PostScript

PostScript：印刷技術の革新

PostScript（ポストスクリプト）は、アドビが1984年に発表したページ記述言語です。この技術は、スタック指向型プログラミング言語であり、描画命令を実行する際にデータをスタックに格納し、後続の命令がそのデータを処理します。このため、記述法はすべて逆ポーランド記法に従っています。名称の「PostScript」は、「追伸」という英語と後置記法の意味がかけられており、独自の位置づけを持っています。

バージョンの変遷

• - 1985年に最初のバージョンであるPostScript Level 1が登場しました。
• - 1990年にPostScript Level 2が発表され、日本語やカラー印刷に対応しました。
• - さらに1996年には、PostScript 3が登場し、PDF形式へのサポートが追加されました（Level 3が正式名称ではありません）。

PostScriptの採用と影響

PostScriptは、1985年にAppleのLaserWriterプリンターに搭載され、大きな注目を浴びました。このプリンターは、モトローラ68000プロセッサと1.5メガバイトのRAMを持ち、当時のパーソナルコンピュータと同等の計算能力を備えていました。LaserWriterは高機能なPostScriptインタプリタを実行し、高品質なページを生成することが可能でした。

従来のコンピュータとプリンター間の通信速度が低いため、印刷物の品質向上が難しい状況でしたが、LaserWriterの登場によりこの問題は解消されました。従来の手法と比べて品質が劣るとされていた電子印刷が、商業印刷の現場でも使用されるようになり、今日のDTPの普及に寄与しました。

また、PostScriptは印刷業界だけでなく、他の分野でも活用されています。たとえば、NeXTというワークステーションでは、Display PostScriptが描画エンジンとして採用され、様々なグラフィック関連の用途に使用されました。今日では、パーソナルコンピュータの性能が向上し、コンピュータとプリンター間の接続速度も改善されたため、個人のレベルでもPostScriptインタプリタを使用し、生成されたイメージをプリンターへ送信することが一般的になっています。

実装と普及

PostScriptは主にレーザープリンターに実装されており、「PSプリンター」として知られています。特に、Mac OS X以前のMacintoshではStandard Printerとして使われ、Windowsでも利用されています。ただし、アドビへのライセンス料が高いため、これらのプリンターは一般的なモデルよりも価格が高額で、DTP用途に特化されています。

ソフトウェア面では、アドビからのライセンスを受けたラスターイメージプロセッサ（RIP）が、エプソンなどのメーカーから販売されていましたが、PSプリンター価格の低下によりその普及はあまり進みませんでした。代替手段として、互換フリーソフトウェアのGhostscriptが登場しています。

PostScriptのサンプル

PostScriptプリンターに送信すると、次のように「Hello World!」と印刷するサンプルプログラムがあります。これは、プログラムを実行することで簡単にアウトプットを得ることができます。さらに、長方形と文字列を描画するプログラムも作成可能で、その結果をテキストファイルとして保存し、Adobe Illustratorなどのソフトウェアで開くことも可能です。

参考文献

PostScriptに関する詳細な情報は、次の文献を参考にすることができます。

• - アドビシステムズ『ページ記述言語 PostScriptチュートリアル&クックブック』
• - アドビシステムズ『PostScriptリファレンスマニュアル』
• - アドビシステムズ『ページ記述言語 PostScriptプログラム・デザイン』

関連項目

PostScriptは、Encapsulated PostScript (EPS)、Forth、Portable Document Format (PDF)など、多くの関連項目とも結びついています。それに加えて、Scalable Vector Graphics (SVG)やWindows Metafile (WMF, EMF)など他のベクタ形式の画像フォーマットとも関連しています。

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