OMV

OMV AGは、オーストリアのウィーンに本社を置く、エネルギー業界を牽引する国際的な企業です。石油・天然ガスの精製、石油化学製品の製造、およびそれらの販売を主要事業としており、中欧地域を中心に事業を展開しています。

1956年、Österreichische Mineralölverwaltung（オーストリア鉱油管理局）として設立されたOMV AGは、当初オーストリア政府の国営企業でした。設立以来、オーストリア国内における石油・天然ガスの生産、精製、供給において重要な役割を果たしてきました。1960年にはウィーン国際空港近くのシュヴェヒャトに石油精製所を開設し、その後もアドリア海とウィーンを結ぶパイプライン（1970年）、オーストリア横断パイプライン（1974年）、西オーストリアパイプライン（1980年）などを建設し、国内のエネルギーインフラ整備に貢献しました。1985年にはリビアでの海外事業にも進出するなど、積極的に事業を拡大してきました。

1987年から民営化を進め、1990年には自社ブランドのガソリンスタンドの営業を開始。1995年には社名を現在のOMV AGに変更しました。現在では、ドイツ、オーストリア、ルーマニアに石油精製工場を保有し、OMV、Avanti、Storh、Petromといったブランドで4200以上のガソリンスタンドを展開する、中欧有数のエネルギー企業に成長を遂げています。

OMV AGの事業は、石油・天然ガスの探鉱・生産（E&P）から精製、販売まで、サプライチェーン全体にわたります。また、石油化学製品の製造も行っており、幅広い製品を顧客に提供しています。近年は、持続可能性への取り組みにも力を入れており、再生可能エネルギーや低炭素技術への投資を拡大しています。

株主構成としては、オーストリア政府系企業であるÖsterreichische Industrieholdingが約3割の株式を保有し、アラブ首長国連邦のアブダビ政府系企業であるInternational Petroleum Investment Companyが約25％を保有しています。この二つの政府系企業がOMV AGの経営に大きな影響を与えていると言えます。最高意思決定機関である監査役会の会長は、シーメンス前社長であるペーター・レッシャー氏が務めています。

OMV AGは、化学工業メーカーのBorealis AGにも出資しており、その株式の36％を保有しています。また、2004年にはルーマニアの大手石油・ガス企業Petromを子会社化し、ルーマニア市場での事業基盤を強化しました。これらの戦略的な投資を通じて、OMV AGは事業の多角化とグローバルな事業展開を進めています。

OMV AGは、ウィーン証券取引所に上場しており、その財務状況や事業実績は、広く一般に公開されています。同社は、中欧地域におけるエネルギー供給の安定性と、持続可能な発展に貢献する重要な役割を担っている企業と言えるでしょう。OMV AGの今後の動向は、中欧地域のエネルギー情勢に大きな影響を与える可能性を秘めています。

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