OTR-21 トーチカ

OTR-21 トーチカ

OTR-21 トーチカ（ロシア語：Оперативно-тактический ракетный комплекс «Точка」）は、ソビエト連邦によって開発された自走式の戦術弾道ミサイルシステムです。このシステムは、連続的な軍事作戦のニーズに応じて設計され、GRAUインデックスでは9K79、NATOコードネームではSS-21 スカラベとしても知られています。「トーチカ」はロシア語で「点」を意味し、スカラベはタマオシコガネを指します。

開発の背景

OTR-21の開発は1960年代後半に始まりました。当時、使用されていた9K52 ルーナ-Mは大型で無誘導であり、精度に限界がありました。そのため、より小型かつ精密な地対地ミサイルが必要とされ、1968年にソビエト連邦閣僚の決議148-56号に基づいて開発が進められました。初期型である9K79は1975年に正式に採用されましたが、当初は戦略ロケット軍に配属されていました。1980年代の末には陸軍に移管されました。

構造と機能

OTR-21 トーチカは、6輪式の9P129 BAZ-5921発射機に戦術弾道ミサイルを搭載しています。このシステムは固体燃料を利用して迅速な展開が可能となっており、機動力が高い点が特長です。9P129は水上での航行もでき、CBRNE（化学、生物、放射線、核）防護機能も装備されています。

バリエーション

OTR-21 トーチカにはいくつかのバリエーションが存在します。以下は主なものです：

• - 9К79（スカラベ-A）：1975年採用。射程は15kmから70km、平均誤差半径は150m、重量は2,000kg。
• - 9К79-1（スカラベ-B）：1989年採用。最大射程120km、平均誤差半径95m以内、重量は2,010kg。
• - スカラベ-C：1990年代に採用。最大射程185km、平均誤差半径70m以内、重量は1,800kg。

弾頭に関しても、様々なタイプがあり、核弾頭（100kt、200kt）、通常弾頭、化学弾頭などが存在します。

実戦での使用例

OTR-21 トーチカは、数多くの紛争で運用されてきました。例えば1994年のイエメン内戦、1999年の第二次チェチェン紛争、2008年の南オセチア紛争などで見られます。最近では、2022年のロシアによるウクライナ侵攻でも使用されており、特に2月24日にはウクライナ政府支配下の病院が攻撃された事件があり、民間人に犠牲者が出ました。

現行の配備状況

OTR-21は現在も一部の国で現役として運用されており、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ブルガリアなどが保有しています。ロシアは220基のトーチカを保持しており、今後9K720 イスカンデルへの更新計画が存在しています。一方で、ウクライナにも90基のトーチカがあります。過去には東ドイツやリトアニアなどでも使用されていましたが、現在は退役しています。

OTR-21 トーチカは、その高い機動性と多様な弾頭オプションにより、現在でも戦術的な運用において重要な役割を果たしています。

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