OWL望遠鏡

OWL望遠鏡計画とE-ELT計画：巨大望遠鏡の進化

ヨーロッパ南天天文台（ESO）は、2001年、VLT計画の後継として、次世代の大型光赤外線望遠鏡の開発構想「OWL（Overwhelmingly Large Telescope）計画」に着手しました。OWL計画は、当時としては空想に近い、口径100mに相当する単一鏡を実現することを目指す、野心的なものでした。

VLTからの継承と革新

OWL計画は、VLT（Very Large Telescope）の運用経験を基に、その限界を克服しようとする試みでした。VLTは複数の望遠鏡を組み合わせた開口合成型望遠鏡であり、非常に暗い天体の観測に課題がありました。OWL計画では、これに対し、単一鏡に相当する巨大な複合鏡を開発することで、宇宙の深部にある暗い天体の観測を目指しました。この計画は、複合鏡技術の開発という技術的な挑戦と、VLT運用で明らかになった課題解決を両輪として進められました。

国際的な競争とE-ELT計画への移行

しかし、OWL計画のような超大型望遠鏡の開発には、膨大な費用と技術的困難が伴います。アメリカ合衆国では、ケック望遠鏡の後継となるTMT計画（Thirty Meter Telescope）や、GMT計画（Giant Magellan Telescope）といった大型望遠鏡計画が既に始動していました。日本でも、すばる望遠鏡の後継となるELT（Extremely Large Telescope）計画の準備が進められていました。

国際的な競争環境と、OWL計画の実現性の課題を踏まえ、ESOは2007年、OWL計画を見直し、より実現可能な規模である口径39mのE-ELT（European Extremely Large Telescope）計画へと移行しました。E-ELT計画は、OWL計画の理念を継承しつつ、技術的な実現可能性と経済性を重視した計画です。建設地はチリのアタカマ砂漠に決定され、2024年頃の完成を目指していました。

E-ELT計画の進捗と課題

E-ELT計画は、数段階のフェーズに分けて実施されました。概念設計（Phase-A）、技術仕様と設置場所の調査（Phase-B）、建設開始（Phase-C）、運用開始（Phase-D）といった段階を経て、最終的に科学観測を開始する段階（Phase-E）に至ります。

E-ELT計画は、巨額の予算を必要とする大型プロジェクトです。そのため、経済状況や技術開発の進捗によって、計画のスケジュールや規模に変更が生じる可能性がありました。金融危機の影響など、様々な要因によって、計画の完成時期は当初の予定より遅れる可能性もありました。

OWLという名称の由来

OWLという名称は、ヘーゲルの『法哲学』序文にある「ミネルバのフクロウは黄昏に飛び立つ」という一節に由来します。知恵の女神ミネルバの象徴であるフクロウが黄昏に飛び立つように、新たな天文学が夜明けを迎えようとしているという、計画への期待が込められています。また、この名称には、結果よりもプロセスを重視する研究活動への姿勢も反映されています。

まとめ

OWL計画からE-ELT計画へと進化したESOの大型望遠鏡計画は、天文学における技術革新と国際協力の歩みを象徴するものです。E-ELT計画の完成は、宇宙観測の新たな時代を切り開くものとして期待されていますが、同時に、巨額の費用と技術的な困難を伴う大型プロジェクトであるため、今後の進捗に注目が集まっています。

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