Old-timer

オールド・タイマー（Old-timer）

「オールド・タイマー」（通称 Ot ）は、八重洲出版が偶数月26日に発行する、旧車専門の自動車雑誌です。他の自動車雑誌とは一線を画し、旧車のレストアや修理に特化した記事を中心に、その奥深い世界を掘り下げています。

概要

1990年秋と1991年春に自動車雑誌「driver」の臨時増刊として「Street Classics」「Street Classics 2」が試験的に刊行され、1991年7月に季刊誌として「Old-timer」の定期刊行がスタートしました。その後、隔月刊へと移行し、現在に至ります。

記事の中心は、旧車のレストアや修理に関するもので、使用する工具やケミカル用品の紹介も詳細に行われます。かつては車種ごとの歴史や解説に特化した特集記事も存在しましたが、近年では、車そのものよりも、車とオーナーとの関係性に焦点を当てた記事が多く見られます。また、取材対象となる車種も、現役当時に高価であったり希少であったりしたものに限定されず、広く旧車全般を扱っています。日本の自動車産業の歴史に関する連載記事も、長期間にわたり掲載されています。

記事の執筆は、編集部員が中心となり、必要に応じて専門家や外部ライターが参加します。しかし、新車の試乗記などを手がける自動車評論家による記事はほとんどなく、一般的な自動車雑誌とは大きく異なる、独自の編集方針が貫かれています。

編集長は、橋本茂春氏、瀬〆良一氏、安藤浩夫氏、柳原解雄氏と引き継がれ、現在は5代目の甲賀精英樹（こうが まさき）氏が務めています。

特徴

旧車専門誌としては、芸文社の「ノスタルジックヒーロー」と並び称される存在ですが、「ノスヒロ」がレストア済みの美しい旧車をグラビア写真で紹介するのに対し、「Ot」はレストアの裏側にまで踏み込み、アマチュアやセミプロのオーナーによる高度なレストア過程を、詳細な写真とキャプションで克明に記録します。「実践主義」を重視する姿勢が、最大の特徴と言えるでしょう。

編集部員や常連執筆者の多くは、他誌では触れられないような泥臭いエピソードや失敗談、不快な出来事なども包み隠さず記述する傾向があります。また、レストアや修理だけでなく、現代の環境下で旧車を長く乗り続けるためのノウハウ紹介にも力を入れています。メーカーからの部品供給が途絶えた樹脂やゴム部品の自作、代替部品の適合加工、ディーゼル規制対象車のエンジン換装、廃油の燃料への転用など、独自の工夫が光ります。これらの「自らの工夫で古いものを長く使う」という考え方から、使い捨て文化や表層的なリサイクルを批判する論調も、記事に度々見られます。

防錆材の紹介や錆の進行具合の観察、専門的な考察など、錆に関する情報も重点的に取り上げられています。整備工場やレストア資材販売店の紹介記事に加え、それらをまとめた一覧記事を定期的に更新し、巻末に掲載することで、読者の利便性を高めています。各地で開催されるイベントのレポートや告知、読者からの投稿や質問も掲載され、読者との交流も大切にしています。

広告ページは工具やメンテナンス用品が中心で、他の自動車雑誌に比べて広告量が少なく、読ませることを重視した誌面構成となっています。

代表的な連載記事

修理は推理だ
修理・レストアの過程を記事にしたもの。編集部員が複数の修理対象を受け持ち、4輪車に限らず、古典オートバイ、スクーター、農業用定置エンジンなど、幅広い題材を取り上げます。
スカイライン54Bレストア雑記
スカイラインS54Bのレストア記事。筆者の環境保護活動への傾倒により、レストア作業よりも社会時評・批判の記述が多くなっています。
どっこい生きてる未再生原形車
レストアされていない、自然な状態で時を経た車を紹介。オリジナルのナンバープレートやワンオーナー車が多いのが特徴です。
日本に帰化したクルマたち
新車当時から日本にある外国車とそのオーナーを紹介。正規ディーラー車が中心です。
轍をたどる
日本の自動車産業の黎明期からの歴史記事。人物や企業に焦点を当て、貴重な文献や図説、写真を引用し、深く掘り下げています。
にっぽん錆探訪　廃車街道を行く
日本各地の路傍や山林に放置された旧車を探訪する連載。廃車体を通じて、わび・さびの世界を描きます。
自給知足の楽しみ方
生活に必要なものを自分で作る実践記事。天ぷら廃油のバイオディーゼルに関する記事が多く掲載されています。

「オールド・タイマー」は、単なる旧車雑誌ではなく、旧車とオーナーの生き様、そして日本の自動車文化を深く掘り下げる、唯一無二の存在と言えるでしょう。

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