Otter Browser

Otter Browserは、自由なオープンソースのウェブブラウザとして、かつてのOpera 12.xの操作感を再現することを目指して開発されました。このブラウザは、Qtフレームワークを採用しており、旧Operaのユーザーが使い慣れたデスクトップ環境でのブラウジング体験を維持することに重点を置いています。GPLv3ライセンスの下で公開されており、Qt WebEngineをChromiumブラウザコアのラッパー関数として利用しています。

2019年1月1日に正式版1.0.01が発表されました。これは、最初のアルファ版リリースから5年後の出来事でした。

開発の経緯

Opera SoftwareがPrestoエンジンの廃止を決定し、共同創設者のヨン・フォン・テッツナー氏が退社したことが、Otter Browser開発の背景にあります。Operaはその後、レンダリングエンジンをPrestoからWebKit、さらにBlinkへと変更しました。同時に、Operaコミュニティサイト「My Opera」が閉鎖され、新生Operaブラウザは多くのユーザーから不満の声が上がりました。

ヨン・フォン・テッツナー氏は、コミュニティのためにVivaldi.netを立ち上げ、後にVivaldi Technologiesを設立。2016年には、旧Operaの精神を継承するブラウザ「Vivaldi」をリリースしました。同時期に、Michał Dutkiewicz氏もOtter Browserの開発を開始しました。

2013年に最初のアルファ版バイナリとソースコードが公開されました。Otter Browserの大きな特徴は、ユーザーが部品を自由に再配置できる組立ユニット形式を採用している点です。これは、旧Operaにもなかった機能です。また、Chromiumに搭載されている言語別フォント選択を行わず、ユーザーが指定したフォントを忠実に表示します。この仕様を維持し、筆記体フォントを自由に選択できるブラウザは、現在ではFalkonとOtter Browserのみとなっています。

現在の状況

現在、QtWebEngineに不備があるため、QtWebkitの復元版も合わせて提供されています。QtWebEngineはまだ標準仕様として採用されていません。Qtの不備により、動作はChromiumよりも重くなっていますが、旧Operaに実装されていた多くの機能が搭載されており、特に旧式Operaを象徴する「左上メニュー」は2014年から変わっていません。開発は毎週続けられていますが、Sourceforgeへのアップロード頻度は7か月に1回にまで減少しています。

実装されている機能

Otter Browserには、以下の機能が実装されています。

パスワードマネージャ
アドオンマネージャ (ただし、派生元のChromiumアドオンには非対応)
多言語コンテンツブロック
スペルチェック
GUIカスタマイズ
URL入力の自動補完
スピードダイヤル
ブックマーク機能
マウスジェスチャー
ユーザースタイルシート
PDF出力 (Skiaを使用、ただしA4サイズのみ)
ノート（メモ帳）

問題点

起動が遅い
QtWebEngine版では、HTML5テストで528点を獲得するものの、Radikoが聴けないなど、動画や音声の再生に一部不具合がある (ただし、YouTubeとWikipedia内の動画と音声は視聴可能)。
QtWebEngine版は頻繁にクラッシュする
QtはChromiumの最新版を採用していないため、セキュリティ面に不安がある
BoringSSLの更新が遅い
メールクライアントとBit[[Torrent]]のモジュールは未実装

関連項目

Dooble: Qtで動作するブラウザ
Falkon: Qtで動作するブラウザで、Otterよりもバグが少ない

外部リンク

* オフィシャルサイト

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