NEC PC-H98シリーズ:PC-98シリーズの頂点に輝いた高性能マシン
NEC PC-H98シリーズは、
1990年から
1993年にかけて販売された、
PC-9800シリーズの上位機種です。「エイチ98」や「ハイパー98」の愛称で親しまれ、当時NECパーソナル
コンピュータのフラッグシップモデルとして君臨しました。
PC-9800シリーズの枠を超えた、高度な機能と拡張性を備えていた点が大きな特徴です。
高解像度表示と拡張性
PC-H98シリーズ最大の特徴は、1120×750ドット(80桁×31行)、最大256色表示可能なハイレゾリューションモードです。これは、当時のPCとしては非常に高い解像度と色数であり、特にCADなどの高度なグラフィック処理を必要とする用途で高い評価を得ました。
また、独自の拡張バスであるNESAバスを搭載。NESAバスは、従来のCバスと新たなEバスを組み合わせたもので、多くの拡張ボードに対応可能でした。さらに、NESA-FO(NESA-Flexible Option)機能により、拡張ボードのリソース自動設定を実現。これは、後のプラグアンドプレイ機能の先駆けと言えるでしょう。
PC-H98シリーズでは、テキストの拡張属性も導入されており、ハイレゾモードとノーマルモードの両方で共通の拡張機能を利用することができました。BIOSレベルでの対応も施され、ソフトウェアの互換性も考慮した設計となっています。
高性能CPUと充実した機能
CPUには、Intel 386DXから486DX2まで、32ビット外部バス対応CPUを搭載。特に386DX搭載機種では、FSB(フロントサイドバス)33MHz駆動モデルが提供され、64KBの1次キャッシュメモリ(非同期SRAM)を標準搭載するなど、当時としては非常に高速な処理能力を実現していました。
他にも、余裕のある電源設計や、丁寧に仕上げられた筐体、特殊なコネクタなど、高い品質と安定性を重視した設計がなされています。ノーマルモードとハイレゾモードの切り替えスイッチも備え、
PC-9800シリーズ用のソフトウェアも動作する互換性も持っていました。ハイレゾモードでは、E2GCやAGDCと呼ばれる新コントローラにより、高解像度のグラフィックを高速に描画することが可能でした。
拡張性の高いインターフェース
PC-H98シリーズの拡張スロットには、EバスとCバスのコネクタが並んだNESAバスが採用されていました。これにより、従来の
PC-9800シリーズ用拡張ボード(Cバス)と、新しいNESAバス対応拡張ボードの両方が利用可能でした。ただし、両方のタイプのボードを組み合わせる場合は、リファレンスディスクを用いた設定が必要でした。
NESAバス対応ボードのみを使用する場合は、レベル割り込み方式を設定することで、IRQの共有を理論上無制限に可能でした。Cバスボードを使用する場合は、エッジ割り込み方式となり、IRQの共有は不可能でしたが、正しく設定された環境では、
PC-9801シリーズとの高い互換性を維持していました。
専用アナログRGBコネクタ
PC-H98シリーズには、専用アナログRGBコネクタも搭載。これは、RGB映像信号だけでなく、ディスプレイからの電源オン指令、ディスプレイへのキーボード接続、音声出力などをサポートする多機能なコネクタでした。ただし、これらの機能は一部の専用ディスプレイでのみ利用可能で、一般的なマルチスキャンディスプレイを使用する場合は、変換アダプタが必要でした。
多様なラインナップ
PC-H98シリーズは、デスクトップ型に加え、PC-H98Tという液晶ラップトップ型モデルも提供。さらに、
サーバー機(SV-H98)、産業用(FC-H98)、業務用(OP-98/H)など、幅広い用途に対応した派生機種も存在しました。メモリ容量はモデルによって異なり、内蔵メモリとNESAバス用メモリを併用することで、128MBを超える容量を実現することも可能でした。
全機種に、5.25インチFDDまたは3.5インチFDDを2基搭載していましたが、3.5インチFDD搭載モデルにはモデル名に「U」が付くなど、モデルのバリエーションも豊富でした。
周辺機器
PC-H98シリーズには、多くの周辺機器が開発されました。NESAバス対応の増設RAMボード、SCSIインターフェースボード、ネットワークインターフェースボード、数値データプロセッサなど、高度な拡張性をサポートする機器が数多く存在しました。これらの機器は、PC-H98シリーズの機能をさらに拡張し、様々な用途に対応可能にしていました。
まとめ
PC-H98シリーズは、
PC-9800シリーズの集大成として、高い性能と拡張性を誇るマシンでした。その複雑さゆえに高価であり、市場での成功は限定的でしたが、PC-98シリーズの歴史において、重要な役割を果たした機種であることは間違いありません。その先進的な技術は、後のPC-98シリーズにも受け継がれていきました。