PC-9801シリーズ

PC-9801シリーズ：日本のパソコン史を彩った名機群

PC-9801シリーズは、日本電気（NEC）が1982年から1995年にかけて開発したパーソナルコンピュータの製品群です。PC-9800シリーズの一部を構成するシリーズとして、一般的には1982年のPC-9801から始まる型番の製品群を指し、シリーズ全体の正式名称である「PC-9800シリーズ」と混同されることも少なくありません。

当初は型番のみで機種が区別されていましたが、後に「PC-9801Vシリーズ」など、型番の後に「シリーズ」を付けて世代や形態を分類することが一般的になりました。公式な愛称が付くようになる以前から、この分類方法は定着していました。1993年には主力機種のラインが「PC-9821」シリーズ（98MATE）に拡大され、PC-9801型番を引き継いだ後継機群は「PC-9801シリーズ」（98FELLOW）として分類されました。1995年11月23日、Windows 95と同時に発売された98MATE VALUESTARシリーズにより、廉価機分野もPC-9821シリーズに移行し、長きに渡ったPC-9801型番の製品群の歴史は幕を閉じました。

主要な機種と世代

PC-9821登場前までのPC-9800シリーズは、CPU、グラフィックコントローラー、筐体デザインの特徴から大きく4世代に分類できます。

1. 8086互換CPU・GDC搭載機の世代: PC-8800シリーズの資産を継承し、16ビット時代の基盤を築きました。特徴的な茶色のアローラインが左向きに配置されています。初代機であるPC-9801(1982年10月発売)はIntel 8086互換のNEC μPD8086(5MHz)を搭載し、128KBのRAM(最大640KB拡張可能)と640×400ドット8色表示のグラフィック機能を備えていました。日本語表示には漢字ROMボードの増設が必要で、初期モデルはJIS第2水準をサポートしていませんでした。

2. V30CPU・GRCG搭載機の世代: 標準的なハードウェア仕様が確立され、圧倒的なシェアを獲得しました。アローラインは右向きに変化しています。NEC独自の高速CPUであるV30の採用、4096色中16色同時発色表示への対応など、グラフィック機能が大幅に向上。3.5インチFDD搭載モデルが登場し、家庭用市場への進出も図られました。

3. 80286/80386CPU・EGC搭載機の世代: MS-DOSの浸透と共に、PC-9801シリーズは黄金期を迎えました。高解像度グラフィックに対応したEGC(Enhanced Graphic Charger)が採用され、多くのモデルでアローラインに多数の溝が入ったデザインが特徴です。80286/80386CPU搭載モデルの登場により、処理能力の大幅な向上を実現。V30とのデュアルCPU構成を採用した機種も存在し、旧ソフトとの互換性を確保していました。

4. FELLOW以降・486CPU搭載の世代: Windows時代への対応を目指しましたが、PC-9801シリーズの終焉を迎えました。PC-9821と同様のデザインを採用し、i486SX/DX2、さらにはPentium OverDrive Processorを搭載したモデルが登場。価格競争激化により、コスト削減のためFM音源が削除されるなど、設計変更が見られました。

ラップトップモデルとノートパソコン

PC-9801シリーズには、デスクトップモデルだけでなく、ラップトップモデルも存在します。1986年発売のPC-98LTは、携帯性を重視した初期のラップトップモデルでしたが、デスクトップモデルとの互換性に課題がありました。その後、PC-9801LVシリーズなど、デスクトップモデルとの完全互換性を備えたラップトップモデルが開発され、ビジネス用途を中心に利用されました。一方、1989年には、より軽量・薄型な「98NOTE」シリーズが登場。これは、東芝の「DynaBook」に対抗する形で開発されたもので、ノートパソコン市場に大きく貢献しました。

その他のモデル

PC-9801シリーズには、CAD用途向けの高解像度ディスプレイを持つPC-98XA/XLシリーズ、PC-8800シリーズとの互換性を備えたPC-98DO/DO+、マルチメディア機能を強化したPC-98GS、ペン入力に対応したPC-9801Pなど、多様なモデルが存在しました。これらのモデルは、それぞれ独自の機能や特徴を持つと共に、PC-9801シリーズ全体の発展に貢献しました。

PC-9801シリーズの遺産

PC-9801シリーズは、1990年代半ばにPC/AT互換機|PC_AT互換機の台頭により衰退しましたが、日本のパソコン市場に大きな影響を与えました。多くのソフトウェアが開発され、幅広いユーザーに利用されたPC-9801シリーズは、日本のパソコン史において重要な位置を占める存在といえます。

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