PL-5 (ミサイル)

PL-5（霹靂-5）

PL-5（霹靂-5、ピン音: Pīlì-5）は、中華人民共和国が開発した短距離空対空ミサイルである。旧世代のPL-2ミサイルの後継機として設計され、中国人民解放軍空軍および海軍航空隊の主要な短距離交戦用兵器として広く配備・運用されている。

開発経緯と概要

本ミサイルの開発は1966年に洛陽光電子技術発展センター（EOTDC）において開始された。開発初期段階から、当時西側諸国で広く使用されていたアメリカ製の短距離空対空ミサイル、AIM-9 サイドワインダーの影響を強く受けており、その全体的な形状や空力特性、特に機体前部に配置された操舵翼としてのカナードと後部の安定翼としての尾翼など、多くの設計上の類似点が見られる。

誘導方式としては、標的航空機が放出する熱を探知・追尾する赤外線誘導方式が主として採用された。ただし、開発の構想段階においては、セミアクティブレーダー誘導方式を採用した派生型であるPL-5Aの開発も計画されていたが、これは実用化されることはなかったとされている。

本ミサイルの開発プロセスは、当時の中国国内の政治情勢、特に文化大革命の影響を受けて深刻な遅延に見舞われた。このため、開発開始から実用化、部隊配備に至るまでには長い年月を要し、実際に中国軍の戦闘機に搭載されて運用が開始されるのは1980年代に入ってからのこととなった。初期生産型であるPL-5Bの開発が完了したのは1986年である。

PL-5シリーズは、一度実用化されて以降も継続的な改良計画が推進され、性能向上が図られてきた。複数の派生型が生み出され、最新のモデルはPL-5EIIとして知られている。

主な技術的特徴と派生型

PL-5シリーズの技術的な特徴は、世代や派生型によって異なる。

PL-5A

セミアクティブレーダー誘導方式を採用した派生型。計画は存在したが、実用化には至らなかった。

PL-5B

PL-5シリーズの初期生産型であり、広く配備されたモデルである。アメリカのAIM-9G サイドワインダーを参考にしたとされており、特に前翼（カナード）の形状などに酷似した特徴が見られる。誘導方式は赤外線誘導。1986年に開発が完了した。

PL-5C

PL-5Bを基にした改良型とされているが、具体的な性能向上点や特徴に関する詳細な情報は少ない。

PL-5E

大幅な性能向上を果たした改良型である。この型では、冷却型アンチモン化インジウム（InSb）を用いた高性能なデュアルバンド・シーカーが導入された。これにより、目標を機体の前方だけでなく、側面や後方など、あらゆる方向から捕捉・追尾することが可能なオールアスペクト能力を獲得した。また、空力的な改良も施され、特にフィンの設計変更により、ミサイルが耐えられる最大許容荷重が従来の30Gから40Gへと向上し、より高い機動性で目標を追尾できるようになった。

PL-5EII

PL-5Eのさらなる改良型であり、現時点での最新モデルとされている。推進剤には低発煙性のものが採用され、ミサイル発射時の視認性が低下し、敵機からの早期発見や回避行動をより困難にしている。シーカーに関しても改良が加えられており、同時期に開発された短距離空対空ミサイルPL-9の技術をベースにしているとされる。この改良により、機軸から大きく外れた方向にある目標を捕捉・追尾するオフボアサイト性能が向上したほか、敵機が散布するフレアなどの赤外線妨害機材に対する抗堪性も強化されている。

搭載機と運用

PL-5シリーズは、その開発・配備時期の長さから、中国が開発・運用する多くの戦闘機や攻撃機に搭載されてきた実績を持つ。主要な搭載機としては、Q-5攻撃機、J-7、J-8、J-8IIといった第一線級の戦闘機、JH-7戦闘攻撃機、さらには比較的新しいJF-17戦闘機などが挙げられる。

中国の軍用機および装備品の輸出入を担う中国航空輸出入公司（CATIC）は、PL-5シリーズがアメリカのAIM-9 サイドワインダーを運用可能な航空機にも搭載可能であると公言している。これは、PL-5がAIM-9との間で物理的および電気的な互換性を持つように設計されていることを示唆しており、潜在的な輸出市場における汎用性を高める要素となっている。

まとめ

PL-5シリーズは、中国における短距離空対空ミサイル開発の歴史において、最も長く運用され、かつ改良が続けられてきた重要な兵器システムの一つである。開発初期には西側ミサイルの影響を受けつつも、その後の改良を経て、独自の高性能シーカーや機動性向上技術を取り入れるなど、着実に性能を進化させてきた。現在も多数が配備されており、中国の航空戦力における短距離迎撃・制空能力を支える基幹的なミサイルとして機能している。

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