インジウム

インジウム (Indium)

インジウム（元素記号: In、原子番号: 49）は、柔らかい銀白色の金属であり、第13族に属しています。常温で安定した結晶構造を持ち、比重は7.3、融点は156.4 °Cと低めです。インジウムは常温下で空気中においても安定しており、水や塩基とは反応しませんが、酸には溶解します。

名前の由来

この金属の名称は、発光スペクトルで見られる濃い藍色（インディゴ）にちなんで名付けられました。

用途

インジウムの主な用途の1つは、酸化インジウムスズ（ITO）として知られる材料で、これは導電性を持ちながら透明な特性を有します。そのため、液晶やプラズマディスプレイの電極としてよく使用されています。ITOは他のピクセルからの光を遮ることなく、各ピクセルに電気信号を伝達できるため、非常に重要な素材です。

また、インジウムはシリコンやゲルマニウムに添加することでp型半導体を形成する用途でも利用されます。低融点特性を活かし、はんだなどの低融点合金に用いられることもあります。加えて、リン化インジウム（InP）などの化合物半導体が注目を集めており、光デバイス用途において重要な役割を果たしています。

そのほか、インジウムの優れた熱伝導性が評価され、箔状に加工されたインジウムはクライオポンプなどの機器に広く使用されています。また、インジウムはガラスに弾かれない特性を持つことから、高真空環境を必要とする装置においてパッキン材料としても重宝されています。

歴史

インジウムは1863年に、リヒターとライヒによって、閃亜[[鉛]]鉱の発光スペクトルから発見されました。

化合物

インジウムは多くの化合物を形成しますが、主なものには以下があります:

• - 酸化インジウム (In2O3)
• - リン化インジウム (InP)
• - ヒ化インジウム (InAs)
• - アンチモン化インジウム (InSb)

自然界には質量数113と115の2種類のインジウム同位体が存在し、その95%以上が質量数115です。この同位体は天然の放射性同位体ですが、半減期が441兆年と極めて長いため、実質的に安定的な性質を持っています。

健康への影響

1990年代半ばまでは毒性に関する情報は少なく、インジウムは安全な金属と見なされていました。しかし、2001年にはITOを吸入したことが原因と考えられる間質性肺炎による死亡例があり、健康への影響が懸念されています。最近の研究では、化合物半導体の一つであるInPが発癌性を持つことが明らかとなり、他のインジウム化合物でも強い肺障害性が確認されています。そのため、ITO需要が高まる中で、インジウムの健康への悪影響に対する認識が高まっています。

供給と採掘

インジウムの最も重要な供給国は中国です。かつて、日本の豊羽鉱山が最大の生産地でしたが、2006年には採掘が停止され、現在は中国が主要な生産国となっています。2017年のデータによると、中国では様々な地域での産出が行われ、他国への供給もされています。

日本はインジウムの最大消費国であり、主に中国や韓国から輸入しています。2006年度には、輸入量は約422トンに及び、その大半が中国からのものでした。

日本の対応策

インジウムの生産量が限られているため、放出されるリサイクル材の利用や、代替材料の検討が進められています。住友[[金属鉱山]]では、ITOの代替として亜[[鉛]]をベースのZTOを検討中です。このような多面的なアプローチを通じて、供給の逼迫を解消しようとしています。

インジウムはその特性を生かし、今後もさまざまな分野での利用が期待されていますが、健康や供給に関する問題も考慮しながらの活用が求められています。

もう一度検索