PRIDE.23 大会レポート
2002年11月24日、日本の
総合格闘技界を牽引していたイベント「PRIDE」は、
東京都文京区にある
東京ドームにて「PRIDE.23」を開催しました。海外では「PRIDE 23: Championship Chaos 2」としてPPV中継されたこの大会は、日本の格闘技史において記憶されるべき幾つかの重要な一戦が組まれた特別な夜となりました。
大会のハイライト
この大会の最大の注目は、日本のプロレス界、そして
総合格闘技の黎明期を支えた高田延彦選手の引退試合でした。対戦相手は、UWF時代から深い繋がりを持つ後輩、
田村潔司選手。師匠と弟子の枠を超えた因縁の対決として大きな話題を呼びました。試合は2ラウンド、田村選手の渾身の右フックが高田選手を捉え、意識を失わせるノックアウトで決着。試合後、勝利した田村選手が高田選手からかけられた言葉に感極まり、涙を流す姿は多くのファンの感動を呼びました。
また、シドニーオリンピック柔道金メダリストである
吉田秀彦選手が、この大会で
総合格闘技のキャリアをスタートさせました。デビュー戦の相手は、PRIDEのリングでそのタフネスと勇敢さを示してきた“アイアン”こと
ドン・フライ選手。吉田選手は柔道仕込みの寝技技術を駆使し、1ラウンドに腕ひしぎ十字固めを極め、レフェリーストップによるTKO勝利を収めました。この白星デビューは、吉田選手の今後の活躍を期待させるに十分なものでした。
さらに、当時のPRIDEにおける最重要階級の一つであったヘビー級の王座次期挑戦者決定戦が行われました。新星
エメリヤーエンコ・ヒョードル選手と、PRIDEのトップ戦線で活躍するヒース・ヒーリング選手が激突。ヒョードル選手は初回から圧倒的な攻撃を見せ、ヒーリング選手は顔面にダメージを負い、1ラウンド終了時に医師が試合続行不可能と判断。ドクターストップによるTKOでヒョードル選手が勝利し、ヘビー級タイトル挑戦権を獲得しました。
ミドル級では、絶対王者
ヴァンダレイ・シウバ選手が、日本の金原弘光選手を相手に王座防衛戦に臨みました。シウバ選手は代名詞ともいえる強烈な打撃、特にグラウンド状態での踏みつけ攻撃で金原選手を追い詰め、セコンドからのタオル投入によるTKOを呼び込み、二度目の王座防衛を果たしました。
キャリア無敗の
横井宏考選手もこの大会でPRIDEデビューを飾り、ジェレル・ヴェネチアン選手を腕ひしぎ十字固めで破り、初陣を勝利で飾りました。その他にも、
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ選手や
桜庭和志選手といった人気選手が登場し、それぞれ一本勝ちを収めるなど、見どころの多い大会となりました。
全試合結果
以下は、PRIDE.23で実施された全9試合の結果です。
第1試合 PRIDEルール(1R10分、2・3R5分)
○
横井宏考 vs. ジェレル・ヴェネチアン ×
2R 3:29 腕ひしぎ十字固め
第2試合 PRIDEルール(1R10分、2・3R5分)
○ ケビン・ランデルマン vs.
山本喧一 ×
3R 1:16 TKO(レフェリーストップ:グラウンドの膝蹴り)
第3試合 PRIDEルール(1R10分、2・3R5分)
○ ヒカルド・アローナ vs. ムリーロ・ニンジャ ×
3R終了 判定3-0
第4試合 ヘビー級王座次期挑戦者決定戦 PRIDEルール(1R10分、2・3R5分)
○
エメリヤーエンコ・ヒョードル vs. ヒース・ヒーリング ×
1R終了時 TKO(ドクターストップ:左目眼窩低骨折の疑い)
※
エメリヤーエンコ・ヒョードルが挑戦権を獲得
第5試合 PRIDEルール(1R10分、2・3R5分)
○
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ vs. セーム・シュルト ×
1R 6:36
三角絞め
第6試合 PRIDEミドル級タイトルマッチ PRIDEルール(1R10分、2・3R5分)
○
ヴァンダレイ・シウバ vs. 金原弘光 ×
1R 3:31 TKO(タオル投入:踏みつけ)
※
ヴァンダレイ・シウバが王座の2度目の防衛に成功
第7試合 PRIDEルール(1R10分、2・3R5分)
○
吉田秀彦 vs.
ドン・フライ ×
1R 5:32 TKO(レフェリーストップ:腕ひしぎ十字固め)
第8試合 PRIDEルール(1R10分、2・3R5分)
○
田村潔司 vs. 高田延彦 ×
2R 1:00 KO(右フック)
*
第9試合 PRIDEルール(1R10分、2・3R5分)
○
桜庭和志 vs. ジル・アーセン ×
3R 2:08 腕ひしぎ十字固め
PRIDE.23は、レジェンドの引退、新時代の幕開けを予感させる選手の登場、そして迫力あるタイトルマッチや挑戦者決定戦が詰まった、まさに「Championship Chaos」の名にふさわしい、歴史に刻まれる大会となりました。