田村潔司

田村潔司：孤高の格闘家

田村潔司（たむら きよし、1969年12月17日 - ）は、岡山県岡山市出身のプロレスラー、総合格闘家です。本名は田村潔（読み同じ）。U-FILE CAMPを主宰し、GLEATのエグゼクティブディレクターを務めています。初代および第3代リングス無差別級王者という輝かしい実績を持ちます。

プロレスラーへの道

幼少期からプロレスラーに憧れ、藤波辰巳に影響を受けてプロレスの世界を目指しました。岡山理科大学附属高等学校では相撲部に所属し、国体にも出場。卒業後、1988年に第2次UWFの入団テストに合格し、翌1989年5月21日に鈴木実（現：鈴木みのる）戦でデビューを果たしました。

新人時代は、前田日明、高田延彦、山崎一夫の付き人として多忙な日々を送りました。田村は当時を振り返り、「体が3つ欲しかった」と語るほどでした。付き人として可愛がられる一方で、中野龍雄（中野巽耀）からは礼儀作法を教わったものの、実際は中野の機嫌を伺う毎日だったそうです。デビュー5戦目となる前田戦で眼窩底骨折という大怪我を負い、1年間の欠場を余儀なくされました。1990年12月に復帰しましたが、直後にUWFは解散しました。

UWFインターナショナルでの飛躍と葛藤

UWF解散後、UWFインターナショナルに移籍した田村は、その才能を開花させます。1992年5月8日には、異種格闘技戦でボクシング世界ランカーのマシュー・サード・モハメッドに一本勝ち。同年末には渡米し、ルー・テーズのもとでレスリング技術を学びました。UWFインターの中心選手として成長する中で、パンクラスの影響を受け、シュート（真剣勝負）への渇望を募らせるようになります。しかし、ベイダー参戦に見られるプロレス回帰にジレンマを感じ、垣原賢人を相手にシュート志向の試合を行いました。

1995年6月18日、ゲーリー・オブライト戦での試合内容に不満を抱き、涙を流します。同日、団体エースの高田延彦が突然引退を表明し、周囲を困惑させました。田村は試合後のコメントで高田への反感を露わにし、8月18日のオブライトとの再戦後には、高田に真剣勝負をアピールしました。しかし、この対戦は実現せず、UWFインターは新日本プロレスとの対抗戦へと進むことになります。田村はこの対抗戦への参加を拒否したため、団体内で孤立してしまいます。資金難に苦しむ会社側との契約問題も重なり、数ヶ月間ノーギャラで過ごすことになります。孤独な状況の中、週刊ファイトの記者である波々伯部哲也から「おこめ券」の提供を受け、田村は今でも彼に感謝の念を抱いています。

同年12月9日、K-1のリングでパトリック・スミスと対戦し、秒殺勝利を収めます。この試合は、UWF最後の希望として注目され、田村自身も負ければ格闘界を去る覚悟で臨んでいました。この試合は、バーリ・トゥードにおける日本人プロレスラーの初勝利となりました。その後、UWFインターの大会に出場するも、前座扱いとなることに不満を抱き、1996年5月27日の桜庭戦を最後に団体を去りました。

リングスでの活躍

1996年、田村はパンクラスではなくリングスへ移籍します。リングスを選んだ理由は、「正式に契約の場を設けてくれたから」でした。6月29日には、ディック・フライ戦で一本勝ちし、デビュー戦を飾りました。リングスでは順調に勝ち星を重ね、長井満也や山本宜久らリングス・ジャパン生え抜きとの対戦でも勝利を収めます。特に、前田日明との試合は名勝負として語り継がれています。前田との再戦では腕十字で勝利し、リングス旗揚げ以降、前田に勝利した唯一の日本人選手となりました。前田引退後はエースとして活躍し、そのスピード感溢れる試合は「回転体」と称されました。

1999年4月23日には、UFC世界ミドル級王者フランク・シャムロックと引き分け、KOKルール採用後は、リングス・ネットワーク外の強豪選手とも数多く対戦しました。2000年2月26日には、キング・オブ・キングス決勝トーナメント準々決勝でヘンゾ・グレイシーに判定勝ちを収めましたが、連戦への不満や契約による専属拘束などを巡って前田と対立し、2001年にリングスを退団しました。

U-FILE CAMP設立とPRIDE参戦

リングス退団後、田村は2000年に総合格闘技ジム・U-FILE CAMPを設立しました。自ら代表を務め、UWFインター時代の同僚・大江慎と共に一般会員への格闘技指導を始めました。2002年2月24日には、PRIDE.19でヴァンダレイ・シウバと対戦し、KO負けを喫しました。同年6月23日には、ボブ・サップにTKO負けを喫しました。その後、DEEPやPRIDEで試合を重ね、2002年11月24日には、師匠である高田延彦の引退試合の相手を務め、KO勝利を収めました。

2003年2月には、U-STYLEを旗揚げし、坂田亘と対戦。2003年8月には、PRIDE GRANDPRIX 2003で吉田秀彦に一本負けを喫しましたが、2005年には瀧本誠に判定勝利を収め、UWF系の面目を保ちました。2005年11月には、UWF系ファイトスタイルのプロレス興行「U-STYLE Axis」を開催しましたが、興行的には失敗に終わりました。2006年には、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラとの再戦に敗れ、その後ミノワマンにKO勝ちを収めました。

その後

2007年4月には、PRIDE最後の興行に登場し、桜庭和志との対戦を示唆しました。同年には、タレントの桜井悠美子と結婚。その後、IGFやHERO'Sにも参戦しました。2008年には、DREAM.2で船木誠勝にTKO勝ちを収めましたが、怪我で2回戦を欠場。同年12月には、桜庭和志との対戦に判定勝ちしました。2019年10月には、プロレスリング・ノアの親会社であるリデットエンターテインメントの社外取締役に就任し、その後顧問に就任しました。2020年8月には、GLEATのエグゼクティブディレクターに就任しました。

人物とエピソード

田村は、リングへの入場時に、ゆっくりと時間をかけて四方に礼をするパフォーマンスをリングス時代から続けています。UWFインター時代には、高田延彦との試合前に握手を拒否し、平手打ちを見舞ったこともあります。実家は寿司屋であり、リングス時代には両親もテレビ番組に出演しました。入門前には、前田日明に邪険に扱われたものの、入団テストではトップの成績で合格したというエピソードも持っています。1995年のK-1での勝利後には、歓喜の涙を流しました。桜庭和志からは対戦オファーを再三拒否していますが、UWFインター末期には、桜庭が自ら対戦相手を買って出たこともあります。田村は、新日本プロレスとの対抗戦を拒否した理由について、「Uインターで築き上げたものは、Uインターの中でこそ意味がある」という考えがあったためだと語っています。

田村潔司は、プロレス、総合格闘技の両方で活躍し、数々の激闘を繰り広げてきた孤高の格闘家です。その独自のスタイルと哲学は、多くのファンを魅了し続けています。

戦績

総合格闘技

（戦績は省略）

グラップリング

（戦績は省略）

獲得タイトル

総合格闘技

初代リングス無差別級王者（1998年）
第3代リングス無差別級王者（1999年）

プロレス

メガバトルトーナメント1997 優勝（1997年）
初代U-STYLE王座

著書

『赤いパンツの頑固者―Uの魂』（1997年12月、スキージャーナル）
『孤高の選択』（2006年2月、東邦出版）

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