PROCYON

PROCYON 超小型深宇宙探査機

PROCYONは東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻の学生たちによって開発された、世界最小の深宇宙探査機です。2014年12月3日、種子島宇宙センターからH-2Aロケット26号機で打ち上げられ、小惑星探査機「はやぶさ2」の副ペイロードとして運用されました。

概要

この探査機は、大型の探査機と比べて、軽量であることはもちろん、コスト面でも非常に優れた性能を持っています。具体的には、重量は大型機の1桁以上軽く、コストは2桁ほど低く抑えられています。その目的は、超小型深宇宙探査機のバス技術を実証し、窒化ガリウム（GaN）を利用した高効率のX帯パワーアンプによる通信、さらには深宇宙での超長基線電波干渉法（VLBI）を用いた航行実験や、近接フライバイによる撮像技術の実証など多岐にわたります。また、プロジェクトには東京大学、ISAS（宇宙科学研究所）、東京理科大学、日本大学、立教大学、明星大学、北海道大学など、複数の研究機関が協力して参加しています。

開発と成果

PROCYONは超小型深宇宙探査技術の基盤となる機能を軌道上で実証することに成功しました。探査機の設計には、様々な電源、通信、姿勢制御、推進系などが含まれており、特にイオンエンジンは軌道変更を可能とする重要な要素です。このイオンエンジンは設計時の推力250µNを大きく上回る330µNに達する性能を示しましたが、残念ながら2015年3月10日に故障してしまいました。

探査機は当初、小惑星2000 DP107への接近フライバイ観測を計画していましたが、イオンスラスタの不調からこの計画は断念しました。それにも関わらず、科学観測や地球との接近時による地球・月の撮影などの活動は続けられました。しかし、2015年12月3日には通信が途絶してしまいました。

このような研究成果は高く評価され、2017年度には文部科学大臣表彰の科学技術賞を受賞するなど、重要な業績を残しました。

構造と仕様

PROCYONのサイズは全長55 cm、全幅55 cm、全高67 cm、重さは64.5 kgとコンパクトです。それでもイオンエンジンによる軌道変更能力を持ち、様々な機能を搭載しています。電源には、太陽電池パネルとして3接合GaAsセルと、リチウムイオン二次電池が使用されています。また、高効率のX帯パワーアンプや、ジオコロナ観測用のライマンα線カメラも搭載されており、科学的なデータ収集を可能にしています。

まとめ

PROCYONは、超小型深宇宙探査機としての新しい可能性を切り開いた重要なプロジェクトです。このプロジェクトは、日本の宇宙研究における革新を示すものであり、将来的な探査技術の発展に寄与することが期待されています。

もう一度検索