PS2 Linux

PS2 Linux（ピーエスツー・リナックス）

PS2 Linuxは、2001年5月9日にリリースされたPlayStation 2向けのLinuxディストリビューションで、ソニー・コンピュータエンタテインメントが開発しました。PS2の可能性を引き出すために設計されており、その背景にはPS2の開発環境がLinuxに基づいていることがありました。これにより、ユーザーの間では「PS2でもLinuxが動かせるのではないか」という期待が広がっていました。

経緯

2001年3月、ソニーの久夛良木健社長が「PS2で動作するLinuxはすぐにも出せる」と発言したことが契機となり、ネット上ではPS2 Linuxの発売を求める署名運動が展開されました。この動きにより、4月26日には公式にPS2 Linuxの発売が発表され、5月9日にはベータ版の予約受け付けが開始されました。予約は開始からわずか8分で予定数を超え、最終的には約7900セットが出荷されました。

その後、2002年1月30日に正式版がリリースされ、続いて受注が開始されました。PS2 Linuxは単なるソフトウェアパッケージだけでなく、HDDユニットやイーサネットアダプタ、USBキーボード、USBマウス、VGAケーブルなどがセットになって提供されました。

ハードウェアと周辺機器

PS2 Linuxには設計上、特別なハードウェアが必要でした。標準的な周辺機器とは異なり、Linuxが動作する環境では専用のチェックが行われなかったため、他の機器と接続する柔軟性がありました。しかし、VGAケーブルに関しては独自の出力方式が採用されていたため、対応するディスプレイに制限がありました。出力方法に苦労したユーザーも多かったようです。

また、添付されるHDDユニットとイーサネットアダプタは、後に販売された製品と同じでありながら、標準的なユーティリティソフトは不足していました。このため、BB Navigatorを利用するためには追加の手続きが必要でした。

ソフトウェアと機能

PS2 LinuxはRedHat系のKondara MNU/Linuxをベースにしたディストリビューションで、基本的なソフトウェアに加え、PS2専用のドキュメントやツールが含まれていました。後にはDebian系のBlackrhino GNU/Linuxも登場し、ユーザーはどちらかのディストリビューションを選択して利用できるようになりました。この柔軟性は、ユーザーの間で注目を集めました。

ブートプロセス

PS2 Linuxは、PS2用のメモリーカードをフォーマットし、その上にLinuxカーネルと設定ファイルをインストールする方式を採用していました。このメモリーカードと付属のDVD-ROMを挿入することで、Linuxが起動されました。アップグレードも可能で、特定の手順を踏むことで新しいカーネルに切り替えることができました。

ブームとその終焉

発売当初はプログラミングの可能性に大きな期待が寄せられ、PS2 Linuxに関する特集なども組まれました。しかし、実際に使用する中でいくつかの課題が顕在化しました。特に、PS2のハードウェアにアクセスできないことや、性能の限界から、科学技術計算には不向きであったことが多くのユーザーを悩ませました。サポートが終了する頃には、コミュニティの活力が失われ、PS2 Linuxは販売停止となりましたが、その後も有志による活動でさまざまなカスタマイズ版が発表されたことが、PS2ユーザーの興味を引き続けました。

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