PS/2コネクタ

PS/2コネクタ：パーソナルコンピュータの歴史を彩る接続規格

PS/2コネクタは、IBM PS/2シリーズで採用されたことからその名が付いた、パーソナルコンピュータにおける入出力ポート接続規格です。小型の6ピンミニDINコネクタという物理的な形状を持ち、同期シリアル通信という方式を用いて、主にキーボードとマウスをパソコンに接続するために利用されてきました。多くのPC/AT互換機|PC_AT互換機のマザーボードに搭載され、長年にわたって標準的なインターフェースとして親しまれてきました。

PS/2コネクタは、キーボードやマウス以外にも、バーコードリーダーや磁気カードリーダーといった入力デバイス、さらにはポータブルHDDやキーボード切り替え装置などの駆動用電源供給にも稀に使用されてきました。キーボードに関しては、以前のPC/ATで使用されていた大型の5ピンDINコネクタと信号内容は同等であり、変換コネクタを使用することで接続が可能です。ただし、PS/2キーボードとの互換性があるのはPC/AT以降の機種に限られます。それ以前のキーボードとは互換性がありません。

PS/2コネクタは、USBとは異なる動作特性を持っています。USBでは、接続機器の抜き差しをしても通常は再認識されますが、PS/2コネクタでは、動作中にキーボードを抜き差しすると、再接続後もキーボードが認識されず、PCの再起動が必要となる場合があります。これは、初代IBM PCには存在したKeyboard Reset信号が、PC/XT以降では廃止されたことが原因の一つです。

ノートパソコンや近年のマザーボードの中には、マウスとキーボードを一つのPS/2コネクタに統合しているものがあります。このような場合、同時に接続できるのはマウスかキーボードのどちらか一方のみとなります。両方を同時に使用するには、PS/2スプリッターを使用して接続ポートを分岐させる必要があります。また、PS/2コネクタは、マウス用が緑、キーボード用が紫といったように、色分けされていることが多いです。

レガシーデバイスとしてのPS/2コネクタ

1990年代後半からUSBやBluetoothといった新しい技術が登場し、PS/2コネクタは徐々にその地位を奪われていきました。しかし、2000年代初頭においては、PS/2コネクタは依然として一定の需要がありました。その理由としては、以下の点が挙げられます。

USBポートの数の少なさ：当時のパソコンは、USBポートの数が少なく、USBキーボードを使用すると貴重なUSBポートを消費してしまうという問題がありました。
BIOSでの操作性：一部のUSBキーボードは、BIOS画面を操作する際にOSのドライバが必要となる場合がありました。PS/2キーボードであれば、BIOS画面でも確実に操作が可能です。
* Nキーロールオーバー：PS/2キーボードは、多くの機種が「Nキーロールオーバー」に対応していました。これは、同時に押されたキーを全て正確に認識する機能です。ゲーム用途などを想定していないUSBキーボードでは、同時に押せるキーの数が制限されていることが多いため、PS/2キーボードのこの機能は大きなアドバンテージでした。

USBの普及が進んだ2000年代中盤以降は、PS/2コネクタを廃止したマザーボードが増加し、PS/2コネクタは完全にレガシーデバイスとなりました。しかし、現在でも、サーバ機や業務用の組み込み機器、シングルボードコンピュータなどにおいては、セキュリティ上の理由やコスト削減の観点から、PS/2ポートのみが搭載されているケースがあります。

変換アダプタ

PS/2とUSBの両方に対応したキーボードやマウスには、PS/2コネクタに接続するための変換アダプタが付属していることが多いです。しかし、このアダプタは物理的な接続のみをサポートしており、プロトコル変換は行いません。そのため、PS/2コネクタとUSB、あるいはUSBのHIDデバイスとの完全な互換性があるわけではありません。

アダプタは、特定のキーボードやマウスに限定されたオプションであり、汎用性があるとは限りません。メーカーが明示していない組み合わせで使用した場合、動作しない、あるいは保証対象外となる可能性があります。古いホスト機器では、タイミングや初期状態の仕様の違いにより、動作しない場合があります。そのような場合、信号を変換するより高度なアダプタが必要となることもあります。

逆に、PS/2接続のキーボードやマウスをUSB接続に変換するアダプタも存在します。信号を変換する回路を搭載した汎用アダプタは、逆方向のアダプタと比べて複雑な構造になっています。また、信号変換を行わないシンプルなアダプタもあり、この場合は、接続するキーボードやマウスがPS/2とUSBの両方の信号に対応している必要があります。さらに、PCIボードにUSBコントローラを搭載し、PS/2ポートを増設する製品もあります。

もう一度検索