Pfeifer Zeliska

Pfeifer Zeliska（プファイファー・ツェリスカ）

オーストリアのPfeifer Waffen社によって生み出されたPfeifer Zeliskaは、一般的な概念をはるかに超えた、巨大な回転式拳銃です。その名称は開発元である社の名前に由来し、オーストリアの公用語であるドイツ語では「パイファー」あるいは「プファイファー」、「ツェリスカ」と発音されます。単なる銃器というよりは、特定の目的のために極限まで性能を追求した結果生まれた、唯一無二の存在と言えるでしょう。

規格外の威力と「世界最強」の称号

本銃の最も特徴的な点は、使用する弾薬にあります。通常、拳銃に使用される弾薬とは一線を画し、Pfeifer Zeliskaは主に.600ニトロ・エクスプレス（.600 N.E.）や.458ウィンチェスターマグナムといった、本来は象などの大型動物を仕留めるために開発された大口径のマグナムライフル弾薬を使用します。

中でも.600 N.E.弾を用いた際の性能は圧巻です。約58.3グラム（900グレイン）もの重さを持つ弾頭が、銃口から約462メートル/秒（1516フィート/秒）の初速で発射され、約6230ジュール（4592フィートポンド）という驚異的な初活力（銃口におけるエネルギー）を発揮します。この圧倒的なパワーが、Pfeifer Zeliskaに「世界最強の拳銃」という称号をもたらしています。一般的な拳銃とは比較にならない、破壊力を持つ銃なのです。

構造と運用上の課題

Pfeifer Zeliskaの作動方式はシングルアクションで、一発ごとにハンマーを手で起こす必要があります。その外観は、クラシックな回転式拳銃であるコルトM1851に似ていますが、サイズは文字通り桁違いです。この巨大さゆえに、拳銃として一般的な携行は現実的ではありません。

さらに、約6キログラムという重量は、もはや拳銃というより狙撃銃クラスです。この重さは、反動を抑えるのに一定の効果がありますが、通常の射撃姿勢で片手あるいは両手で保持して射撃することは極めて困難です。例えるならば、5キログラムのダンベルを腕だけで支えながら正確に狙うような感覚に近いと言えます。

発射時の強烈な反動を軽減するため、銃身には8個のガスポート（発射ガスを噴射して反動を打ち消す穴）が設けられています。しかし、それでも反動は凄まじく、安全かつ効果的に射撃を行うためには、バイポッド（二脚）やトライポッド（三脚）に固定するか、あるいは地面に伏せて土嚢などで銃を支えるといった、依託射撃が事実上必須となります。

開発目的と存在意義

Pfeifer Zeliskaは、その形態こそ拳銃と見なされるものの、前述のような運用上の制約から、一般的な実用性はほぼ皆無と言って良いでしょう。開発の背景には、日常的な護身や狩猟といった目的ではなく、「世界最強の拳銃」というタイトルを獲得すること自体に価値を見出す、ある種の探求心やロマンがあったと推測されます。市場にはそうした特別な称号を持つアイテムに対する需要も確かに存在し、本銃はまさにそのために創造されたと言えます。

製造は熟練の職人によるハンドメイドの受注生産で行われるため、その価格は非常に高価で、約13,840ユーロ（日本円で200万円以上、為替レートによる）とされています。

ちなみに、「世界最強の拳銃」の称号はPfeifer Zeliskaに与えられていますが、「世界最大の拳銃」は、ポーランドのガンスミス、リシャルト・トビス氏が製作した、レミントンM1859を巨大化したモデルである「トビーレミントン」に与えられています。

メディアでの露出

Pfeifer Zeliskaは、その特異性からいくつかのフィクション作品にも登場しています。

漫画・小説・アニメ: 『ヤングガン・カルナバル』では「フェイファー・ツェリザカ」と表記され、登場人物が使用しています。
PCゲーム: 『SAS Zombie Assault 3』では「Nitro Express .600」として、また『Biohazard Village』では「ハンドキャノンPZ」という名称で、特定の条件をクリアすることで入手可能な強力な武器として登場します。

Pfeifer Zeliskaは、実用性を度外視してでも極限のパワーを追求した、銃器史においても非常にユニークな存在です。その圧倒的な性能とサイズは、見る者に強いインパクトを与え、「世界最強」という称号の響きと共に、多くの銃器ファンの間で語り継がれています。

関連情報

S&W M500: 同じく非常に強力なマグナム弾（.500S&Wマグナム弾）を使用する回転式拳銃。
コルト・シングル・アクション・アーミー: Pfeifer Zeliskaの外観のベースとなったとされるクラシックな回転式拳銃。

更なる情報は、Pfeifer Waffen社の公式サイト内Zeliska紹介ページや、世界最大の拳銃を製作したリシャルト・トビス氏のサイトなどで確認することができます。

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