PowerBook 500シリーズ

Macintosh PowerBook 500シリーズ解説

Macintosh PowerBook 500シリーズ（コードネーム Blackbird）は、Apple Computerが1994年5月16日に発表したポータブルコンピュータの製品ラインナップです。ステレオスピーカー、トラックパッド、イーサネットを搭載した最初のモデルとして、その後のノートパソコンの進化に大きな影響を与えました。

特徴

PowerBook 500シリーズは、モトローラの68LC040 CPUを搭載し、CPUドーターカードによるPowerPCアーキテクチャへのアップグレードが可能でした。ディスプレイには9.5インチのデュアルスキャンパッシブカラー/B&Wディスプレイが採用され、16ビットステレオサウンド、拡張ベイ、PCカード機能、2つのバッテリーベイ、F1-F12ファンクションキーを備えたフルサイズのキーボードなど、当時の最新技術が投入されました。

また、バッテリーにはショート防止端子カバーが付き、LocalTalk経由でシリアルプリンタやネットワークに接続できるシリアルポートや、イーサネット接続用のAAUIポートも搭載していました。

歴史

PowerBook 500シリーズは、PowerBook 5300シリーズの発表とともに終息しましたが、ローエンドモデルとして発表されたPowerBook 190は、唯一68LC040プロセッサを搭載した500シリーズの後継機種となりました。

1994年5月16日の発表時には、ハイエンドのアクティブマトリックスLCDを搭載したPowerBook 540cと540、パッシブマトリクスLCDを搭載した520cと520が発売されました。PowerPC CPUへのアップグレードやPCカード (PCMCIA) 拡張への対応が約束されていましたが、Appleが68kラインのCPUからPowerPCチップへの移行期であったため、供給不足が発生しました。

半年後には、グレースケールTFTディスプレイの540が製品ラインから外れ、メモリやハードドライブの容量がアップグレードされ、システムも漢字Talk 7.1.1から7.5に変更されました。PCカードケージもリリースされ、Macintoshで初めてPCMCIA機能が利用可能になりました。

1995年には、アップルジャパンがMacintosh PowerBook 550cを日本限定で発売しました。このモデルは、より大きなカラーTFTディスプレイ（10.4インチ）、FPUを搭載したCPU 68040、大容量ハードドライブ、黒い筐体、日本語キーボードを特徴としていました。

PowerPCを搭載したPowerBook 5300の遅延により、PowerPCアップグレードの需要が高まり、Newer TechnologyがAppleのアップグレードモジュールをいち早く市場に投入しました。Newer Technologyは、Appleの製品を上回る高性能なPowerPCドーターカードを開発し、注目を集めました。

業界へのインパクト

PowerBook 500シリーズは、以下の点で業界初となる仕様を搭載していました。

16ビットのステレオサウンド@44.1 kHz
画面上部の両角にあるステレオスピーカ
AAUI経由のイーサネット
汎用拡張ベイ
バッテリー状態をモニターするインテリジェントなニッケル水素電池
CPUドーターカード
トラックパッド

PowerBookとして先駆けて注目された仕様は以下の通りです。

68LC040/68040 CPU
PowerPC 603e CPUへのアップグレード
9.5/10.4インチTFTディスプレイ
デュアルスキャンのパッシブカラーLCDとB/W LCD
CPUドーターカード
拡張ベイ
PCMCIAモジュール
2つのバッテリベイ
フルサイズのキーボードとファンクションキー
外部モニタ接続時のスリープ機能
バッテリーコネクターカバー

製品バリエーション

PowerBook 500シリーズのプロトタイプは黒い筐体でしたが、実際に製品化されたのは日本限定の550cのみでした。550cは、他のモデルとは異なり、より大きなアクティブマトリクスカラーLCD、日本語キーボード、フル68040プロセッサを搭載していました。他のモデルは、さまざまなディスプレイや68LC040プロセッサを搭載し、チャコールグレーの筐体で統一されていました。

拡張性

PowerBook 500シリーズは、モデムやPCMCIAカード、FPUコプロセッサなどの拡張モジュールを利用可能でした。特に、PCMCIAカードケージは、様々なリビジョンが存在し、16ビットWi-Fiカードを使用できるRev.Cモジュールは人気がありました。

レガシー

PowerBook 500シリーズは、当時のラップトップの標準を大きく上回る機能を搭載し、その後のノートパソコンの進化に大きな影響を与えました。内蔵Ethernet、SCSIポート、ADBなど、デスクトップMacintoshの機能をポータブルに実現した画期的な製品でした。

PowerBook 500シリーズは、30万台しか生産されなかったPowerBook 5300シリーズに対し、合計60万台生産されました。

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