PowerPC

PowerPC（パワーピーシー）

PowerPCは、1991年にApple Computer、IBM、モトローラの提携によって開発されたRISCタイプのマイクロプロセッサーであり、その設計はIBMのPOWERアーキテクチャを基盤としています。その後、AppleのMacintoshやIBMのRS/6000といった製品に採用され、さらにゲーム機や組み込みシステム、スーパーコンピューターでも幅広く利用されています。

概要

PowerPCは、命令セットやレジスタセット、メモリーアドレッシング、キャッシュモデルなどを規定するアーキテクチャを持っていますが、具体的な実装に関する詳細までは規定していません。そのため、製品レベルでの実装であるL2、L3キャッシュなど、アーキテクチャに則った多数の機能が加わり、高度な性能を持つプロセッサーとして仕上がっています。

このプロセッサーの特徴として、優れた性能を持ちながらも低い消費電力であることが挙げられ、これはゲーム機や高性能ルーター、レーザープリンターなどにおいて重宝されています。また、FPGA用のIPコアとしての提供もあり、組み込みシステム向けに広く利用されてきました。PowerPCは本来、AIM連合のCPUとして開発されたものであり、他のCPUは開発されませんでしたが、このプロジェクトでの唯一の成果として残っています。

デスクトップコンピュータでは、AppleのPower MacintoshシリーズやIBMのワークステーション、さらにはBlueGene/LなどのスーパーコンピュータなどがPowerPCを使っています。また、2005年から2006年にかけて発売された主要な据え置き型ゲーム機（Wii、PLAYSTATION 3、Xbox 360）も、いずれもPowerPCアーキテクチャーに基づいています。

現在、PowerPCプロセッサーの開発と製造は、フリースケール・セミコンダクター（現NXP）とIBMによって行われています。さらに、Cellプロセッサーと呼ばれるPowerPCの派生品も開発されており、IBMと東芝セミコンダクターによって設計・製造されています。特に4xxシリーズ（組み込み系CPUコア）はAMCCに売却されましたが、ハイエンドクラスの製造はIBMに限られ、開発の中心は依然としてIBMが担っています。

設計特徴

PowerPCは、RISCの原則に従いスーパースカラーアーキテクチャを採用しています。このアーキテクチャにより、命令の実行が効率化されています。POWERアーキテクチャに基づくものの、命令セットはシンプルさが追求され、複雑な命令も含まれながらも、バイエンディアンのサポートや複数の浮動小数点演算形式が備えられています。具体的には、32個の汎用レジスタ（GPR）と32個の浮動小数点レジスタ（FPR）を用意し、サブルーチンの呼び出しはスタック渡しを基本としつつ、レジスタでの引き渡しも可能です。

特にG4シリーズからは、SIMD命令を取り入れたAltiVecが導入され、数値演算のパフォーマンスが向上しました。さらに、条件分岐命令は非常に多様であり、プログラマが分岐予測を最適化できる仕組みが整っています。

歴史的背景

PowerPCの開発は、1970年代末のRISCアイデアに基づくIBMの801プロトタイプ・チップに由来します。その後、特に高性能で市場競争力のあるプロセッサー開発を目指した結果、生まれたのがPOWERアーキテクチャでした。このアーキテクチャは1990年代初頭に広く認知されることとなりました。

1991年、Apple、IBM、モトローラの三社は合意し、PowerPCの開発が進められました。新型プロセッサーは市場のニーズに合わせた高機能を備え、Appleの製品において重要な役割を果たしました。

しかし、90年代中頃になると、PowerPCのソフトウェアサポートが十分ではなく、主要なOSの開発企業が離れていく事態となりました。このため、デスクトップ市場でのシェアを拡大することができず、最終的にはAppleも2006年からインテル製のプロセッサーへの切り替えを行います。以降はサーバーやスーパーコンピュータにおいての使用が中心となりました。

現在の利用状況

現在もPowerPCは、特にサーバーやスーパーコンピュータの分野で活躍していますが、組み込み系市場においては、ARM系プロセッサーに競争を強いられる場面が増え、新規採用が減少しています。それでも、高性能な組み込みシステムや特定のアプリケーションでは、PowerPCアーキテクチャが依然として強い影響力を持ち続けています。

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