Prismaticallization

プリズマティカリゼーション：繰り返す一日と複雑な運命の歯車

『プリズマティカリゼーション』（Prismaticallization、略称：P17n）は、1999年にアークシステムワークスよりPlayStation向けに発売されたアドベンチャーゲームです。同社が「サークレイト・アドベンチャー」と銘打った本作は、ループものとして知られ、哲学的なテーマと当時としては斬新なゲームシステムで多くの話題を呼びました。その後、ドリームキャスト版、SuperLite 1500シリーズ版が発売され、2007年にはゲームアーカイブスでも配信されています。

繰り返す一日と、絡み合う運命

一見、恋愛アドベンチャーゲームのようですが、恋愛要素は比較的控えめです。高校3年生の主人公・射場荘司は、幼馴染みの明美に誘われ、避暑地のペンションで夏休みを過ごすことになります。荘司は人生に目的を見いだせず苦悩するインテリ青年という自己像に酔いしれ、怠惰な日々を送っています。ペンションで出会うヒロインたちも、それぞれに心の闇を抱えているのですが、荘司はそれを見過ごしてしまうのです。

ある日、荘司は森でプリズムのようなオブジェを拾います。このオブジェによって、荘司たちは同じ一日を何度も繰り返すことになります。最初は自覚がないものの、プレイヤーである私たちは荘司が既視感を抱いていることに気付かされます。繰り返される一日の中で、少しずつ変化が訪れ、その変化はプレイヤーの選択によって左右されます。

独自のゲームシステム：記録と解放の連鎖

このゲームの最大の特徴は、その複雑でユニークなゲームシステムにあります。プレイヤーは、特定のイベントを「記録」することで、次の繰り返しでその結果「解放」し、ストーリーを進めていきます。「記録」できる状態は5つまでと制限されており、限られたリソースをどのように管理するかが重要なポイントとなります。

「記録」は、その日のストーリーには直接影響を与えません。しかし、「記録」した状態は、次の繰り返しで「解放」され、ストーリーに変化をもたらします。この「記録」と「解放」の連鎖は、まるでパズルを解くかのように複雑で、プレイヤーを何度も同じ一日を繰り返す試行錯誤に駆り立てます。既に見たメッセージはスキップできるようになっているなど、プレイヤーへの配慮も見られますが、それでもなお、このシステムの難解さは多くのプレイヤーを悩ませました。

個性的なキャラクターたち

ゲームには、主人公の射場荘司を始め、個性豊かなキャラクターたちが登場します。

射場荘司: 人生に目的を見いだせず苦悩する主人公。豊富な知識を持ちながらも、行動を起こすことを避け、哲学用語を駆使した自己弁護に終始します。
鳴川澄香: 陽気で無邪気な高校1年生。人から嫌われることを恐れる一面も持ちます。
沢村雪乃: 控えめで物静かな高校1年生。病弱で友達が少ない読書家です。
柊明美: 活発で運動好きな高校3年生。荘司の幼馴染みです。
木ノ下さより: ペンションを切り盛りする女性。おっとりとした性格ですが、恋には一途です。
琴原みゆ: 無口で感情を表さない小学6年生。内向的で、家庭環境にも問題を抱えています。
* 謎の男: ペンション周辺をうろつく若い男。荘司の持つオブジェを狙っています。

それぞれのキャラクターは、複雑な背景と内面的な葛藤を抱えており、彼らの物語が、繰り返す一日の流れの中で少しずつ明らかになっていきます。

多様なエンディングと、繰り返しの意味

ゲームには、5人のヒロインそれぞれに対応するエンディングが存在します。どのエンディングを迎えるかは、プレイヤーの「記録」と「解放」の選択によって左右されます。エンディングでは、それぞれのキャラクターの運命、そして繰り返す一日の意味が示唆されます。

例えば、みゆエンドでは、みゆが時間の循環を利用して自身の夢を叶えようとしますが、予期せぬ出来事が起こり、夢は叶わず終わります。他のエンディングも同様に、予想外の展開や、キャラクターたちの葛藤が描かれています。

音楽とイラスト

『プリズマティカリゼーション』は、音楽やイラストにも力を入れています。主題歌「Smile」とエンディングテーマ「With you」は、Water Clockが歌い上げています。また、攻略本やサウンドトラックCDも発売されており、多くのイラストが収録されています。

影響と類似作品

『プリズマティカリゼーション』は、その独特のゲームシステムと哲学的なテーマから、多くの作品に影響を与えました。特に、『恋はデジャ・ブ』は基本設定が酷似しており、『そう、あたしたちはこんなにも理不尽な世界に生きているのだらよ』の「記憶管理モード」は、本作のシステムの発展系と言えるでしょう。

『プリズマティカリゼーション』は、その複雑さゆえに批判も受けましたが、その独創性と深みのあるストーリーは、今もなお多くのプレイヤーを魅了し続けています。繰り返す一日、そして複雑に絡み合う運命の歯車。このゲームは、プレイヤーに、時間と選択、そして人生の意味について考えさせる、忘れられない体験を与えてくれるでしょう。

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