Proton (ソフトウェア)

Protonとは

Protonは、Microsoft Windows向けに開発されたゲームを、Linuxベースのオペレーティングシステム上で動作させるための互換レイヤーです。Valve社がCodeWeavers社の開発者と協力して開発を進めています。この技術は、Wineのパッチ版と、ゲームのパフォーマンスと互換性を向上させるためのソフトウェアやライブラリを組み合わせたものです。ProtonはSteamクライアントに「Steam Play」として統合されており、ユーザーは特別な設定をすることなく、WindowsゲームをLinux上で楽しむことができます。

主な特徴

- 互換性: Windowsゲームの互換性を向上させることを目的としています。公式のホワイトリストに掲載されたゲームだけでなく、多くの非公式対応のゲームも動作可能です。
- パフォーマンス: Direct3DからVulkanへの変換レイヤー（DXVK、VKD3D-Proton）など、3Dパフォーマンスを向上させるためのライブラリが組み込まれています。これにより、Windowsネイティブに近いパフォーマンスを実現しています。
- Steam Playとの統合: Steamクライアントに統合されているため、ユーザーは特別な設定を必要とせずにWindowsゲームをLinux上でプレイできます。
- オープンソース: Protonはオープンソースで開発されており、コミュニティによる貢献も盛んです。

開発の背景

Protonは2018年8月21日に最初にリリースされました。Valveはリリース時に、ユーザーが微調整をすることなく、Windowsネイティブのように動作することが確認された27のゲームのホワイトリストを公開しました。これには、Doom(2016)、Quake、Final Fantasy VIなどが含まれていました。

技術的な詳細

Protonには、3Dパフォーマンスを向上させるための以下のライブラリが含まれています。

- DXVK: Direct3D 9, 10, 11 をVulkanに変換します。
- VKD3D-Proton: Direct3D 12 をVulkanに変換します。
- D9VK: かつてDirect3D 9のサポートを提供していましたが、2019年12月にDXVKに統合されました。

互換性

ProtonはWineのフォークであり、Windowsアプリケーションとの互換性を高く維持しています。公式のホワイトリストに加えて、多くのゲームが非公式ながらもProtonと互換性があるとされています。また、Linux版が存在するタイトルであっても、Protonの使用を強制することができます。

Proton GE

Proton GEは、GloriousEggroll氏が開発しているProtonのフォークです。Proton ExperimentalにRaw inputのサポート、Nvidia CUDAによるPhysXおよびNVAPIのサポート、アップストリームのWineのパッチなどが追加されています。Protonではライセンス等の問題で同梱できないライブラリが追加されているため、Protonでは動作しないゲームが動作したり、一部のゲームでパフォーマンスが向上することがあります。

ProtonDB

ProtonDBは、各ゲームのProtonとの互換性に関するクラウドソースデータを収集し、「Borked」から「Platinum」までの評価尺度で表示する非公式のコミュニティサイトです。このサイトは、WineHQ AppDBに触発され、クラウドソースによる互換性レポートを収集・表示し、同様の評価システムを採用しています。

リリース履歴

ValveはProtonのメジャーバージョンを7つリリースしています。バージョン表記は、ベースとなる上流のWineのバージョンにパッチ番号を付加したものです。Protonは通常、上流のWineベースよりも数リリース遅れています。Proton GEなどの非公式フォークは、Protonを最近のWineバージョンにリベース化するために作成されており、公式リリースよりもゲームとの互換性が向上する場合もあれば、損なわれる場合もあります。

2020年12月、ValveはProton ExperimentalというProtonの永久ベータブランチをリリースしました。これは、新機能やバグフィックスを通常のリリースよりも早く取り入れ、最終的には通常のリリースに含まれるようにするものです。

Steam Deckは、Protonを使用してソフトウェアタイトルの互換性を高めています。

外部リンク

- ProtonDB – ゲームの互換性データベース

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