Q&A (映画)

ニューヨークの闇を暴くサスペンス『Q&A』

1990年公開のアメリカ映画『Q&A』は、シドニー・ルメット監督による重厚な社会派サスペンスです。エドウィン・トレスの同名小説を映画化、ベテラン刑事による麻薬売人の射殺事件を軸に、若き検事補の闘いと、警察や司法の闇を暴いていきます。

物語は、ニューヨーク市警のベテラン刑事マイケル・ブレナンが麻薬売人を射殺する事件から始まります。ブレナンは正当防衛を主張しますが、事件を担当することになった新米地方検事補のアロイシャス・アル・ライリーは、事件に隠された不審な点に気づき始めます。

アルは、事件の目撃者である麻薬ディーラーの証言とブレナンの主張に矛盾点を見つけ、単なる正当防衛ではない可能性を疑います。上司である検察官クインはアルに捜査中止を命じますが、アルは正義感から捜査を続行。市警の刑事バレンタインとチャッピーと共に、真相解明に挑みます。

捜査を進めるうちに、アルはブレナンが裏組織の殺し屋として雇われていたこと、そして事件の黒幕が上司のクインであることを突き止めます。クインは過去に重大な犯罪を犯していた過去を持ち、その事実を隠蔽するためにブレナンを利用していたのです。

アルは、信頼するベテラン検事ブルーメンフェルドの協力を得て、検察上層部に事態を報告しようとしますが、検察は事件の大きさに怯え、隠蔽工作を企てます。

ブレナンは、事件の重要な証人ロジャーを殺害し、さらに別の証人を爆殺。彼の残虐な行為は、アルの正義感をさらに燃え上がらせます。最終的にブレナンはアルに襲い掛かりますが、他の刑事に射殺されます。

しかし、検察はブレナンの単独犯行として事件を処理。クインの関与や警察の隠蔽工作は闇に葬られてしまうのです。アルは、正義が勝つことを信じて捜査に臨みましたが、現実の壁に打ちのめされ、無力感を味わいます。

この映画は、単なる犯罪サスペンスにとどまりません。人種差別、警察の腐敗、権力の濫用など、アメリカ社会の暗い側面をリアルに描き出しています。ニック・ノルティ、ティモシー・ハットンら実力派俳優陣の熱演も光り、観客に強い印象を与えます。

特に、アルを演じるティモシー・ハットンの演技は圧巻です。正義感と理想に燃える若き検事補が、社会の闇に触れ、挫折と葛藤を繰り返す姿は、観る者の心に深く響きます。また、ベテラン刑事ブレナンを演じるニック・ノルティも、暴力性とカリスマ性を併せ持つ複雑な人物像を見事に演じ切っています。

『Q&A』は、単なるエンターテイメント作品としてだけでなく、社会問題を考えるきっかけを与えてくれる、重厚な社会派ドラマです。ラストシーンの衝撃的な展開は、観客に深い余韻を残し、長く記憶に刻まれることでしょう。正義とは何か、権力とは何か、そして社会とは何かを問いかける、考えさせられる作品です。

主な登場人物

マイケル・ブレナン: ニューヨーク市警のベテラン刑事。優秀だが、人種差別的な発言や暴力的な一面を持つ。ニック・ノルティ演じるブレナンの複雑な演技は、この映画の重要な要素です。
アロイシャス・アル・ライリー: 新米地方検事補。正義感と理想に燃えるが、社会の闇に直面し葛藤する。ティモシー・ハットンの熱演が光ります。
ロベルト・テキサドール（ボビー・テックス）: 麻薬ディーラー。事件の重要な目撃者。
ケヴィン・クイン: アルの上司である検察官。野心家で、自身の保身のために不正を働く。
レオ・ブルーメンフェルド: アルを信頼するベテラン検事。クインの裏の顔を知っている。
ルイス・ヴァレンティン、サム・チャップマン: アルと協力する市警の刑事。
* ナンシー・ボッシュ: ボビーの内縁の妻。アルの元恋人。

『Q&A』は、社会派サスペンス映画として高い評価を受け、多くの映画ファンを魅了し続けています。一度は観る価値のある、忘れがたい名作と言えるでしょう。

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