QS-9000

QS-9000は、アメリカの自動車業界を代表するビッグスリー（ダイムラー・クライスラー、フォード・モーター、ゼネラルモーターズ）が共同で策定した、自動車産業に特化した品質システム要求事項の規格です。この規格は、ISO 9001:1994をベースとして、自動車産業に特有の要求事項を盛り込んだもので、サプライチェーン全体での品質向上を目指すものでした。

規格の成り立ちと背景

QS-9000は、自動車産業がグローバル化する中で、品質管理の標準化と効率化の必要性が高まったことを背景に生まれました。従来のISO 9001:1994だけではカバーしきれない、自動車産業特有の品質要求に対応するために、QS-9000が策定されました。この規格は、自動車メーカーとそのサプライヤー間の品質保証体制を強化し、製品の信頼性向上に大きく貢献しました。

ISO 9001からの発展

QS-9000は、ISO 9001:1994を基盤としていますが、単なる適用にとどまらず、自動車業界特有の品質管理やプロセス管理に関する要求事項を明確化しました。これにより、自動車メーカーはサプライヤーに対して、より具体的な品質基準を要求しやすくなり、業界全体の品質レベルの底上げが図られました。

規格の失効と後継規格

ISO 9001:1994の改定に伴い、ISO 9001:2000が発行されたことを受け、自動車産業向けの品質システム規格も改定されることとなりました。これに伴い、QS-9000は2006年12月14日をもって失効し、後継規格としてISO/TS16949:2002が発行されました。ISO/TS16949は、QS-9000の理念を引き継ぎつつ、より高度な品質管理システムを構築するための規格として、現在も自動車産業で広く活用されています。

QS-9000の構成

QS-9000の第3版は、以下の構成でまとめられています。

序文：規格の目的や適用範囲などを説明しています。
セクションI：ISO 9000に基づく要求事項を規定しています。
セクションII：顧客（自動車メーカー）固有の要求事項を規定しています。これは、各自動車メーカーが自社の品質基準に合わせてサプライヤーに求める要求をまとめたものです。
附属書：規格を補足する情報や具体例などを提供しています。
* 用語集：規格で使用される専門用語を定義しています。

認証取得の重要性

ダイムラー・クライスラーやゼネラルモーターズなどの自動車メーカーは、QS-9000の第三者認証取得をサプライヤーとの取引条件としていました。これにより、サプライヤーは品質管理体制を確立し、高品質な製品を安定的に供給することが求められました。QS-9000の認証取得は、単なる規格適合だけでなく、品質管理能力を証明するものであり、自動車産業におけるサプライヤーの競争力を左右する重要な要素となっていました。

まとめ

QS-9000は、すでに失効した規格ではありますが、自動車産業における品質管理の重要性を広く認識させ、サプライチェーン全体の品質向上に大きく貢献した規格として、その歴史的意義は大きいと言えるでしょう。また、QS-9000の理念は、後継規格であるISO/TS16949に引き継がれ、今日の自動車産業における品質管理の基盤となっています。

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