R-TYPE Δ

R-TYPE Δ (アール・タイプ デルタ)

『R-TYPE Δ』は、1998年11月19日にアイレムソフトウェアエンジニアリングよりPlayStation向けにリリースされた横スクロールシューティングゲームです。

旧アイレムからゲーム事業の版権を引き継いだ後、新たに制作されたR-TYPEシリーズの作品にあたります。2007年にはゲームアーカイブスとしてPSPおよびPlayStation 3向けに配信されましたが、2011年8月11日に販売が終了しています。

概要

本作の舞台は、第一次バイドミッション終結から約1年後の2164年、地球圏と太陽系周辺で発生した未曽有の事件「サタニック・ラプソディー」です。グラフィックはシリーズで初めてフル3Dポリゴンで描画されていますが、自機の操作や敵・地形の当たり判定は従来のシリーズと同様に画面上のXY平面で行われており、サイドビューシューティングとしての基本的なゲーム性と操作感覚は維持されています。

ゲームシステム面では大きな変革があり、特にプレイヤーが操る自機を複数の中から選択できるようになった点が挙げられます。前作『R-TYPE III』で導入されたフォース選択のシステムがさらに発展した形です。選択可能な機体ごとに、波動砲、フォース、ミサイルといった主要な武装の性能が全て異なるため、プレイヤーの戦略や好みに応じた多様なプレイスタイルが可能となりました。この「機体の派生」という概念は「Rの系譜」と位置づけられ、後のシリーズ作品、特に『R-TYPE FINAL』でより深く掘り下げられることになります。

また、フォースに紐づく新たな兵装システムとして「Δウェポン」が導入されました。これに伴い、従来のスピードアップアイテムが廃止され、任意のタイミングで機体スピードを調整できるようになったほか、ビットを自由に振り回す操作ができなくなったり、地形に接触しても即ミスにならないといった変更が加えられています。地形接触によるミスが廃止された背景には、開発段階での検証の結果、地形アウトは単純な難易度上昇要素にしかならず、むしろ地形接触を許容することで新たな戦略が生まれるという判断があったとされています。難易度選択、ハイスコア記録、ギャラリーといった現代的なオプション機能も、本作以降のシリーズで定番となりました。

ゲーム内のサウンドはUSPが担当しており、その音楽も高く評価されています。ミスをして途中から再開する際に、その時点に応じたBGMが流れるシステムはステージ全体の没入感を高めています。さらに、ボスキャラクターが機械系か生体系かによって、それぞれ異なるボスBGMが用意されています。

プロモーション映像と製品版でステージ構成が大幅に変更されたことも、開発段階での試行錯誤を示しています。

あらすじ

第一次バイドミッションを辛くも生き延びたR-9は、巡洋艦クロックムッシュに回収され地球へ帰還しました。ミッション完了から2ヵ月後、地球軌道の宇宙要塞「アイギス」で対バイド兵器の凍結作業が進められる中、R-9は修理されずに格納庫に保管されます。翌2164年3月、アイギスは残存部隊を残し一時封鎖されます。

同時期、天文台が不可解な隕石群の落下を観測。その中に含まれていた正体不明の物体が地球に到達後、各地で電子制御兵器の暴走が発生。さらに、アイギスに搭載されていた局地殲滅ユニット「モリッツG」が突如、アジアの市街地へ降下を開始します。モリッツGは本格的な破壊活動こそ行わないものの、自己防衛システムにより一切の接近を拒み、回収不能な状態に陥ります。軍は非常態勢を敷き戦闘機を差し向けますが、モリッツGには全く歯が立ちません。窮地に立たされた軍は、まだテスト段階にあった新型機「R-9 delta」をモリッツG討伐のため実戦投入することを決断します。この一連の事件は、後に「サタニック・ラプソディー」と呼ばれることになります。

自機

本作では、物語の開始から選択可能な3機に加え、特定の条件を満たすことで使用可能になる隠し機体を含め、合計4機の自機が登場します。

R-9aII デルタ (DELTA): 第一次バイドミッションで活躍したR-9をベースに、大気圏内での運用を考慮して小型・軽量化された試作型後継機。プロジェクト名であり、機体自体の愛称としても使われます。試験的に拡散波動砲を搭載。スタンダード・フォースを装備し、Δウェポンは「ニュークリアカタストロフィー」です。

RX アルバトロス (ALBATROSS): マクガイヤー社と軍が共同開発したフォーステスト機。R戦闘機としては珍しい大きな水平主翼を持ちます。『R-TYPE FINAL』でのコードはRX-10。異層次元航法推進システムを応用した炸裂波動砲（高圧縮波動砲）を装備。フォースは金属製の触手を持つ「テンタクル・フォース」で、開閉によりレーザーの特性が変化します。Δウェポンは「ネガティブコリドー」です。

R-13 ケルベロス (CERBERUS): ウォーレリック社開発の、従来の「R」シリーズとは一線を画すコンセプトの機体。高バイド係数フォースの有線制御など、特殊な仕様が多いですが、作戦後に異層次元に取り残され消息不明となります。『R-TYPE FINAL』でのコードはR-13A。追尾性を持つライトニング波動砲（オーバーライトニング）を装備。フォースは攻撃性の高い「アンカー・フォース」で、有線制御されます。Δウェポンは「ヒステリックドーン」です。

パウ・アーマー (POW ARMOR): シリーズでお馴染みのアイテムキャリアーが、本作では特定の条件を満たすと自機として使用できます。『R-TYPE FINAL』ではTP-2のコードが与えられました。バイド体を具現化したエネルギーを放つバイド波動砲を装備。スパイク状のバイド・フォース（ニードル・フォース）は分離時に全方位攻撃を行います。Δウェポンは「バイディックダンス」です。

Δウェポンシステムとドースシステム

本作の核となる新システムです。フォースを敵に接触させてダメージを与えたり、敵弾をブロックすることで「ドースゲージ」にバイドエネルギーが蓄積されます。ゲージが100%に達すると「ドースブレイク」というエネルギー臨界が発生し、一時的にフォースの性能が向上するとともに、一度だけ「Δウェポン」が使用可能になります。

Δウェポンはフォースの種類に応じて異なり、発動すると画面全体に強力な攻撃を繰り出します。これは一般的なシューティングゲームにおけるボムに相当するもので、広範囲の敵に大ダメージを与えるだけでなく、敵弾を全て消去する緊急回避手段としても機能します。Δウェポン使用後はドースゲージがリセットされるため、いつ発動するかが戦略上非常に重要となります。

エンディング

本作では、プレイヤーがクリアに使用した機体によってエンディングが変化します。R-9aII ΔやRX アルバトロスでクリアした場合、自機は異層次元の壁を破って通常空間へ帰還を遂げます。しかし、R-13 ケルベロスでクリアした場合のみ、搭載されていた波動砲の特性（エネルギーを電気に変換して放出）により、異層次元操作を担うフォースを失うと脱出手段を失ってしまうため、異層次元に取り残されバイド体に捕らえられるという結末を迎えます。これは、R-13が従来のR戦闘機とは異なる特異な設計思想を持つことによる悲劇的な展開です。

R-13のこの結末は、後の『R-TYPE FINAL』で回収され、隠しステージにてバイド体と化したR-13と交戦することになります。また、RXのエンディングに登場する迎えの戦艦は、『R-TYPE TACTICS』に登場するヘイムダル級宇宙戦艦と形状が酷似しており、シリーズ間の繋がりを示唆しています。

開発

開発は1997年に開始されました。当時の家庭用ゲーム機市場ではポリゴン表現が主流になりつつあり、開発チームはドット絵が基本だった『R-TYPE』シリーズを3Dグラフィックで表現することを決定しました。ディレクターを務めた九条一馬氏にとって、本作はアーケードゲームの開発経験はあったものの、初めての家庭用ゲーム機向けタイトル開発でした。アーケードと家庭用ではゲームデザインのアプローチが異なる点に悩み、家庭用ならではの要素として、特定の条件達成で開放される実績システム（GALLERYなど）を導入しました。

九条氏は開発当時、「R-TYPE」という大きなブランドを背負うプレッシャー、ポリゴン化や家庭用向けへの移行といった判断に対する不安を感じていたと振り返っています。『R-TYPE』ファンに受け入れられるかという懸念と、せっかくポリゴンにするなら3D表現を活かしたいという相反する思いが強く存在したと語っています。

他作品への影響

本作で確立されたシステムの一部は、2021年に発売された『R-TYPE FINAL2』にも引き継がれています。

評価

メディアによる評価では、Game*Sparkの臥待 弦氏が、本作を「アーケードのような繰り返しプレイの宿命から解放され、シリーズ中でも初心者が受け入れやすい作りになっている」と評価しています。また、最低難易度「KID」でもシューティングゲームとしての面白さは損なわれていないと述べています。

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