RAF B.E.2

B.E.2：第一次世界大戦の空を彩った複葉偵察機

B.E.2は、第一次世界大戦で活躍したイギリスの複葉偵察機です。大戦初期、イギリス陸軍航空隊の主力機としてその名を馳せました。高い信頼性と操縦性の良さから、多くのパイロットに愛された機体でしたが、その一方で、戦闘機として用いるには致命的とも言える欠点も抱えていました。

ジェフリー・デ・ハビランドによる設計と改良

ジェフリー・デ・ハビランドによって設計されたB.E.2は、1912年2月に初飛行を行いました。前身となるB.E.1をベースに開発され、エンジン以外の部分はほぼ同一です。1912年8月には、高度10,560フィート（約3,219メートル）という当時のイギリス記録を樹立するなど、その性能の高さを証明しました。B.E.2aからgまで、いくつかのバリエーションが存在しますが、基本的な設計は共通で、劇的な性能向上はみられません。

写真偵察機としての適性と戦闘における脆弱性

B.E.2は、優れた安定性から写真偵察機として高い評価を得ました。しかし、その安定性は裏を返せば運動性の悪さを示しており、速度や上昇性能に劣る点が戦闘において大きな弱点となりました。特に1915年後半、ドイツ軍の戦闘機フォッカー・アインデッカーの台頭によって多くの損失を出すことになり、「フォッカーの馬草（Fokker Fodder）」という不名誉な渾名を与えられました。

この惨状の原因は、機体性能の悪さだけでなく、当初の非武装状態、そしてドイツ軍の戦闘機本格配備後、慌てて装備されたルイス機銃の配置にもありました。パイロットが後席、偵察員が前席というレイアウトのため、機銃の操作が困難で、後方への防御が不十分だったのです。この致命的なレイアウトは、最後まで改善されませんでした。

初期には爆撃任務にも使用されましたが、エンジン出力の低さから、爆弾を搭載する際には偵察員と機銃を外す必要があり、護衛機なしでは格好の標的となりました。1916年になると、西部戦線での偵察任務には性能不足となり、多くの損失を出し続けました。

後継機への交代と新たな役割

1917年、より高性能なブリストルF.2bなどの後継機が登場すると、ようやくB.E.2は第一線から退きました。しかし、その活躍は完全に終焉したわけではありません。一部のB.E.2cは、英本土でアブロ 504と共に夜間戦闘機として運用され、斜め上向きに固定されたルイス機銃でツェッペリン飛行船を攻撃するなど、意外な活躍も見せています。

改良型：B.E.9とB.E.12

B.E.2を基に、単座仕様のRAF B.E.12や、スパッドA.2式のゴンドラ銃座を装備したB.E.9といった改良型も開発されました。これらの改良型は、B.E.2の欠点を克服しようと試みられたものですが、基本設計の限界を超えることはできませんでした。

主要諸元（B.E.2c）

B.E.2は、その性能の限界と欠点を抱えながらも、第一次世界大戦初期のイギリス空軍を支えた重要な機体でした。その歴史は、航空機開発の進歩と、戦争における技術革新の激しさを感じさせるものです。

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