RAMPO

映画『RAMPO』：乱歩の世界観と異例の制作過程

1994年6月25日、映画『RAMPO』（らんぽ）が公開されました。これは、映画生誕100年、江戸川乱歩生誕100年、そして松竹創業100周年という記念すべき年に制作されたミステリー、ファンタジー映画です。しかし、この作品は単なる記念作品として終わらず、映画界に大きな衝撃を与えました。

その理由は、異例ずくめの制作過程にあります。まず、プロデューサーである奥山和由氏が、当初の監督である黛りんたろう氏の作品に納得せず、全体の70％を自ら撮り直すという、前代未聞の事態が発生しました。その結果、「黛バージョン」と「奥山バージョン」という、2つの異なるバージョンが、同じ日に、異なる劇場で公開されるという、異例の事態となりました。上映時間はそれぞれ93分と98分。配給収入は12億円という記録も残しました。さらに、1995年には未公開シーンを追加し、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団による音楽を追加した「インターナショナル・ヴァージョン」（上映時間100分）も公開されました。

奥山バージョンとインターナショナル・バージョンは、映倫のR指定（現在のR15+指定）を受けています。この指定は、後に説明するサブリミナル演出などが関係していると考えられます。

物語：小説と現実の交錯

映画の物語は、昭和初期の東京を舞台に、探偵小説家である江戸川乱歩（竹中直人）が、夫殺しの容疑をかけられた女性・静子（羽田美智子）の事件に巻き込まれるところから始まります。静子の事件が、乱歩自身の小説と酷似していたことから、乱歩は自分の分身である明智小五郎（本木雅弘）を小説に登場させ、静子を救おうとします。乱歩の日常と小説世界が交錯する、幻想的な物語が展開されます。横溝正史役を香川照之、その他、豪華キャストが出演しています。

ゲームとの連動：インタラクティブな体験

映画『RAMPO』は、セガサターン用ゲームソフトとしても同時発売されました。このゲームは映画と密接に連携しており、映画と全く同じ俳優陣が出演し、映画で使用されたセットと、ゲーム用に製作されたセットの両方が使用されています。CG映像も駆使され、映画版には登場しないオリジナルキャラクターも追加されています。

ゲームは、映画的手法による演出が全編に渡り施され、物語は音声セリフのみで進行。コマンドやメッセージウィンドウはなく、動画、静止画、音声で構成されています。プレイヤーは、登場人物への対応を「はい」「いいえ」といった感情で選択できる「感情入力システム」を採用。このシステムは、プレイヤーの感情移入を深め、ゲームの展開やエンディングに影響を与えます。「真説・夢見館」でも導入された、プレイヤー自身の感情を反映するシステムが特徴です。探偵としての能力は、事件解決の方法によって5段階で評価されます。

奥山バージョンと黛バージョンの違い

「奥山バージョン」は、「黛バージョン」に対して、いくつかの変更が加えられています。主な変更点は以下の通りです。

一部出演者、スタッフの変更
ブルース・ジョエル・ルービンによる英語ナレーションの追加
『火星の運河』を元にしたシーンのカット
『お勢登場』のアニメーションシーンの追加（監督：名倉靖博）
有名人多数参加の映画披露パーティーシーンの追加
「1/fゆらぎ」を意識した美術セットと音楽
サブリミナル効果を狙ったカット
フェロモン入り香水の散布（上映館内）
* 主題歌にミルドレッド・ベイリーの「All of me」を採用

サブリミナル問題

1995年、TBSのオウム真理教関連番組でサブリミナル演出が問題視されたことを受けて、WOWOWは「奥山バージョン」の放送時に、サブリミナル効果を狙ったとされるカットを27か所カットして放送しました。

まとめ：記憶に残る衝撃作

映画『RAMPO』は、その斬新な映像表現、異例の制作過程、そしてゲームとの連動など、数々の話題を生み出した作品です。2つのバージョンが存在すること自体が、映画史における異例であり、観客に多様な解釈を許容する作品となっています。 その独特な世界観と、豪華キャスト、そして今もなお語り継がれる制作秘話は、映画史に深く刻まれた衝撃作として記憶されています。

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