RATAN-600

RATAN-600 電波望遠鏡

RATAN-600は、ロシアのゼレンチュクスカヤに位置する電波望遠鏡です。その特徴は、巨大な円形主鏡と複数の副鏡、そして受信機を組み合わせた独特な構造にあります。主鏡は半径576メートルの円周上に配置された895枚の長方形の電波反射板で構成されています。それぞれの反射板は2×7.4メートルと巨大で、角度を調整することで天体からの電波を中央に集めることができます。

主鏡で集められた電波は、中央に位置する円錐状の副鏡、または5つの放物面円筒副鏡のうちいずれかに導かれます。これらの副鏡の先には、それぞれ受信機や観測装置が配置されており、観測目的に応じて使い分けられます。この独特な構造により、RATAN-600は直径約600メートル級の電波望遠鏡に相当する高い解像度を達成しています。これは、単一の電波望遠鏡としては世界最大級です。

観測モード

RATAN-600には、3つの観測モードがあります。

2つの反射鏡を使用するモード: 円形主鏡の一部で集めた電波を円筒形の副鏡に集め、受信機に送ります。
3つの反射鏡を使用するモード: 直線状の平面反射鏡で反射させた電波を、円形主鏡の一部に導き、さらに円筒形副鏡を通して受信機に送ります（クラウス型望遠鏡）。
円形反射鏡全体を使用するモード: 天頂付近の天体を観測する際に、円形主鏡全体を使い、中央の副鏡に電波を集めます。

円形の主鏡は分割して使用することも可能で、複数の方向の天体を同時に観測することもできます。例えば、円形主鏡の一部を受信機Aに、別の部分を受信機Bに接続するというように使用できます。波長8cmの電波を観測する場合、円形反射鏡全体を使用した場合の実効的な反射面積は1000平方メートル、解像度は1平方分に達します。

主な観測対象と目的

RATAN-600は主に子午線を通過する天体を観測しており、地球の自転を利用して観測対象を切り替えます。観測可能な電波の周波数範囲は610MHzから30GHzですが、特にセンチ波帯の電波観測に重点が置かれています。最大の解像度は2秒角です。

RATAN-600の中心的な観測対象は太陽、特に太陽コロナです。また、地球外知的生命探査（SETI）にも利用されています。

技術的な問題で観測が困難であったBTA-6望遠鏡とは異なり、RATAN-600は1974年の観測開始以来、多くの研究者に利用され、数々の科学的成果を挙げています。

地球外知的生命体候補からの信号

2015年5月15日、RATAN-600は恒星HD164549の方向から非常に強い電波（0.75ジャンスキー）を受信しました。この信号の強度は望遠鏡のスキャンに合わせて増減しており、遠方からの信号であることが示唆されました。周波数11GHzでこれほど強い電波は自然界では珍しいため、地球外知的生命体からの信号ではないかと話題になりました。

しかし、この信号は地上の人工電波である可能性も指摘されました。11GHz帯は軍事利用にも割り当てられているため、当初は偵察衛星からの信号ではないかという見方もされました。その後の詳細な調査の結果、ロシア科学アカデミー特別天体物理観測所は、この信号は地上で発せられたものである可能性が高いと結論付けました。

参考文献

RATAN-600（英語）（ロシア語）
ロシア科学アカデミー特別天体物理観測所（英語）（ロシア語）
Google Mapによる衛星写真

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