RCトゥーロン

ラグビー・クラブ・トゥーロネ

ラグビー・クラブ・トゥーロネ（Rugby Club Toulonnais）は、フランス南部の風光明媚なプロヴァンス＝アルプ＝コート・ダジュール地域圏に位置する港町トゥーロンに根ざした、歴史あるプロフェッショナルラグビーユニオンクラブです。「RCトゥーロン」の通称で親しまれており、フランス国内のラグビー最高峰リーグである「トップ14」で激しい戦いを繰り広げています。

クラブの歩み

クラブの起源は1908年6月に遡ります。地元の複数のラグビークラブから選手が集結し、RCトゥーロンが誕生しました。創設後、着実に力をつけたチームは、1931年のフランス選手権決勝でリヨンOUを破り、初の栄冠であるブレニュス盾を獲得します。この快挙を達成してボルドーから帰還した選手たちは、およそ3万人もの熱狂的な地元住民から盛大な歓迎を受けたと伝えられています。しかし、その後しばらくの間はタイトルから遠ざかり、1932年から1986年にかけて4度決勝に進むも、いずれも優勝には手が届きませんでした。

転機となったのは、ダニエル・エレロ氏がコーチに就任してからです。クラブは再び躍進を遂げ、1987年にはラシン・クラブ・ド・フランス、1992年にはビアリッツ・オランピックを下し、国内選手権で再び優勝を果たしました。しかし、その後は成績が低迷し、経営状態も悪化。1000万フランもの多額の赤字が明らかになり、2000年にはフランス・ラグビー・リーグからプロD2（2部リーグ）への降格処分が言い渡される苦境に立たされます。

プロD2での戦いを経て、2004-05シーズンに優勝を果たし、5年ぶりにトップ14への復帰を遂げますが、翌シーズンは26試合中わずか3勝に終わり、たった1年で再びプロD2降格という厳しい現実を突きつけられました。

ムラド・ブジェラル体制と黄金期

2006年、トゥーロン出身の著名な実業家であり、コミック・ストリップで財を成したムラド・ブジェラル氏がクラブの新会長に就任しました。彼はRCトゥーロンをフランス国内だけでなく、ヨーロッパでも有数のビッグクラブにすることを目標に掲げ、積極的なチーム強化に着手します。アンドリュー・マーティンズやゴンサロ・ケサダといった実力派選手に加え、特にニュージーランド代表のキャプテンを務めたスター選手、タナ・ウマガの加入はラグビー界全体に大きな話題を呼びました。

2008年にプロD2で再び優勝し、トップ14への再昇格を果たすと、ブジェラル会長による有力選手獲得のペースはさらに加速します。イングランド代表の伝説的キッカーであるジョニー・ウィルキンソンをはじめ、オーストラリア代表のジョージ・グレーガンやジョージ・スミス、アルゼンチン代表のフェリペ・コンテポーミなど、世界各国の代表クラスのスター選手が次々とチームに加わりました。この強力な選手層の構築が徐々に結果に繋がり始め、RCトゥーロンは2012年にトップ14準優勝、2013年にはハイネケンカップ優勝とトップ14準優勝を達成。そして、2014年にはハイネケンカップとトップ14の両方で優勝するという快挙を成し遂げ、ヨーロッパ屈指の強豪としての地位を不動のものとしました。さらに2015年には、ハイネケンカップの後継大会であるヨーロピアンラグビーチャンピオンズカップを制し、前身大会を含め前人未踏のヨーロッパ最高峰クラブ選手権3連覇という偉業を達成しました。

本拠地スタジアム

RCトゥーロンの本拠地として使用されているのは、トゥーロン市内にあるスタッド・マイヨール（Stade Mayol）です。このスタジアム名は、20世紀初頭に活躍した地元の著名な歌手、フェリックス・マイヨール氏に由来するとされています。彼はクラブのためにスタジアム建設地を寄付したと伝えられており、その功績を称えられています。収容人数は15,400人です。

熱狂のピルピル

RCトゥーロンの試合前には、「ピルピル（Pilou-Pilou）」と呼ばれる独特のチャントが観客席で繰り広げられます。これはクラブの熱狂的な応援文化の一つであり、元々は1940年代にマルセル・ボドレドという一人の選手が考案したものが始まりとされています。その後、このチャントはファンの間で広まり、受け入れられていきました。ピルピルはリーダー役の観客がコールし、それに合わせて他の観客が一斉にレスポンスするという形で進行します。歌詞の内容は、山から海辺の港町（トゥーロン）に降りてきた屈強な戦士たち、すなわちRCトゥーロンの選手たちの力強さや恐ろしさを誇示し、チームを鼓舞するものです。なお、このチャントはスペイン料理の「ピルピル」とは全く関係がありません。

獲得タイトル

RCトゥーロンは輝かしい歴史の中で数多くのタイトルを獲得しています。

国内タイトル

フランス選手権（現・トップ14）
優勝：4回（1931年, 1987年, 1992年, 2014年）
準優勝：9回（1948年, 1968年, 1971年, 1985年, 1989年, 2012年, 2013年, 2016年, 2017年）
フランス選手権プロD2（2部）
優勝：2回（2005年, 2008年）
準優勝：1回（2001年）

国際タイトル

ハイネケンカップ／ヨーロピアンラグビーチャンピオンズカップ
優勝：3回（2013年, 2014年, 2015年） - 史上初の3連覇を達成
EPCRチャレンジカップ
優勝：1回（2022-23シーズン）

クラブを彩ったスター選手

RCトゥーロンの歴史は、世界レベルのスター選手たちの活躍によって彩られてきました。特にムラド・ブジェラル会長時代には、その顔ぶれは非常に豪華なものでした。イングランド代表歴代最多得点記録を持つジョニー・ウィルキンソン、ワラビーズ歴代最多キャップ保持者であったジョージ・グレーガン、オールブラックスの伝説的キャプテン、タナ・ウマガやマア・ノヌー、スプリングボクスの巨漢ロック、ヴィクター・マットフィールドやエベン・エツベス、イタリア代表の象徴セルジオ・パリセといった各国のレジェンドたちがトゥーロンでプレーしました。また、日本代表のフルバックとして活躍した五郎丸歩選手も、日本人選手として初めてRCトゥーロンに所属し、歴史に名を刻んでいます。彼らの存在は、クラブの成功に大きく貢献するとともに、世界中のラグビーファンを魅了しました。

RCトゥーロンは、その情熱的な応援文化、スター選手の存在、そして輝かしいタイトル獲得の歴史によって、フランスラグビー界において特別な存在感を放ち続けています。

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