RD-0233

RD-0233（GRAUインデックス15D95）とRD-0234（GRAUインデックス15D96）は、ソビエト連邦およびロシアで開発・使用された液体ロケットエンジン群の一部です。これらのエンジンは、推進剤として貯蔵可能な液体である酸化剤の四酸化二窒素（N2O4）と燃料の非対称ジメチルヒドラジン（UDMH）を使用しています。効率的な燃焼を実現するため、酸化剤リッチ二段燃焼サイクルと呼ばれる高度な技術が採用されています。

RD-0233とRD-0234は基本設計を共有していますが、両者には重要な相違点が一つ存在します。それは、ロケットの推進剤タンクを加圧するために使用されるガスの温度を調整する役割を持つ熱交換器の有無です。具体的には、RD-0234エンジンのみがこの熱交換器を備えており、RD-0233には搭載されていません。この機能は、タンク内の圧力を適切に保ち、推進剤を安定してエンジンに供給するために不可欠なものであり、両エンジンのシステム構成における役割分担に繋がっています。

これらの液体ロケットエンジンは、特にソビエト連邦が開発した大陸間弾道ミサイル（ICBM）であるUR-100UTTKh（GRAUインデックス15A35）の第1段推進システムとして中核的な役割を担いました。UR-100UTTKhの第1段は、複数のエンジンを組み合わせたクラスター構成を採用しており、合計で4基のエンジンが搭載されていました。この4基の構成は、熱交換器を持たないRD-0233が3基と、熱交換器を備えたRD-0234が1基という特徴的な組み合わせでした。RD-0234の熱交換器は、このクラスター全体の推進剤供給システムにおいて重要な機能を提供していたと考えられます。

RD-0233/RD-0234エンジンの開発は、元々UR-100UTTKhの前身モデルであるUR-100N（GRAUインデックス15A30）ICBM向けに開始されました。このように、初期の開発は軍事目的であるICBMの推進力確保という背景がありました。

UR-100UTTKhを含むICBM本体の新規生産はすでに終了しています。しかし、これらのエンジンの技術や既存の機体が他の用途に転用されました。特に、UR-100Nミサイルを基礎として再利用・改造された宇宙打ち上げ機、すなわちロコットやストレラといった商業用ロケットは、これらの液体ロケットエンジンを含む推進システムを引き続き運用しました。2015年時点の記録によれば、これらの再利用された打ち上げ機はまだ運用状態にあり、RD-0233/RD-0234エンジンの信頼性と長期間の運用能力を示していました。

新規の生産は停止しているものの、過去に製造されたエンジンのストックや改修されたユニットが、非軍事的な目的での宇宙輸送手段として活用されたという事実は注目に値します。

関連項目
UR-100N
ロコット
ストレラ
液体推進剤を使用するロケットエンジン

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