ロコット

ロケット・ロコット：大陸間弾道ミサイルから宇宙への転身と終焉

ロコットは、ロシアが開発した3段式液体燃料ロケットです。その最大の特徴は、旧ソ連の大陸間弾道ミサイルUR-100N（NATOコードネーム：SS-19）を流用している点にあります。軍事転用されたミサイルを平和利用に転換させた、ユニークな歴史を持つロケットと言えるでしょう。

ロコットは、約107トンの総重量、全長29メートル、最大直径2.5メートルというサイズです。1段目と2段目にはUR-100Nの技術が用いられており、推進剤にはUDMH（非対称ジメチルヒドラジン）と四酸化二窒素を使用します。3段目には、軌道変更機能や宇宙空間でのエンジン再点火能力を持つブリーズ-K（または改良型のブリーズKM）エンジンを搭載し、複数の衛星を異なる軌道に投入することが可能でした。

ロコットの打ち上げは、当初バイコヌール宇宙基地で行われていましたが、後にプレセツク宇宙基地に移行されました。これは、ユーロコット社（EADS SPACE Transportationとクルニチェフ国家研究生産宇宙センターの合弁事業）による商業打ち上げ体制への移行を反映しています。ロケットの打ち上げ費用は、時期によって変動し、1999年時点では約1500万ドル、2013年時点では約3600万ドルでした。

ロコットは、多くの衛星打ち上げミッションで成功を収めましたが、2005年には欧州宇宙機関のCryoSat衛星搭載ミッションで失敗を経験しました。2段エンジンの制御システムの不具合により、予定外の燃焼が続き、衛星は喪失してしまいました。この事故を受け、ロコットの打ち上げは一時中断されましたが、その後再開し、韓国の地球観測衛星アリラン2号の打ち上げに成功しています。

しかし、ロコットの運用は長くは続きませんでした。2014年には、ロシア国防省が飛行制御システムにウクライナ製の部品を使用していることを理由に、2016年以降ロコットの使用を停止することを発表しました。その後、2015年に3回、2016年に1回の打ち上げが行われましたが、その後はソユーズ2.1vやアンガラ1などの新型ロケットに役割が移行されていきました。そして2019年12月、ロコットは34回目の打ち上げをもって、その歴史に幕を閉じました。

ロコットは、軍事技術を転用した商業ロケットとして、宇宙開発に貢献しました。その成功と失敗は、宇宙開発における技術革新とリスク管理の難しさ、国際協力の重要性を改めて認識させる事例と言えるでしょう。ロコットの技術は、後継ロケットの開発に活かされ、ロシアの宇宙開発を支える技術基盤の進化に貢献しました。今後、これらの技術がどのように発展し、宇宙開発の未来を形作っていくのか、注目すべきです。

ロコットの名称は、ロシア語で「轟き」を意味し、その力強い打ち上げの姿を象徴していると言えるでしょう。その名前は、宇宙開発の歴史に刻まれた、ひとつの重要なマイルストーンとして記憶されることでしょう。

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