RD-216

ロケットエンジン RD-216

RD-216は、旧ソ連時代に開発された主要な液体燃料ロケットエンジンの一つです。1960年、宇宙開発の黎明期において、著名な設計者ヴァレンティン・グルシュコ率いるOKB-456（後のNPOエネルゴマシュ）がその開発を手掛けました。このエンジンは、主に軍事用途の弾道ミサイルや、それを改修した宇宙ロケットの第1段推進器として設計されました。

技術的特徴

RD-216は、AK-27と呼ばれる酸化剤と、ヒドラジンおよび非対称ジメチルヒドラジン（UDMH）の混合燃料を使用するバイプロペラント（二元推進系）エンジンです。酸化剤としては四酸化二窒素（N₂O₄）も利用されます。推進剤供給方式には、ガス発生器サイクルを採用しています。

このエンジンの特徴的な構造は、RD-215という単体エンジンを基にしている点にあります。RD-215は2基の燃焼室とノズルを備えており、RD-216はRD-215を2基組み合わせることで構成されます。これにより、合計4基の燃焼室を持つエンジンモジュールとして機能します。

エンジンの性能諸元は以下の通りです。真空中での最大推力は約1728キロニュートン（kN）に達しました。エンジンの全高は約2.2メートル、最大直径は約2.26メートル、そして乾燥質量は約1350キログラムです。燃焼室内の圧力は約73.6バール（7.36メガパスカル）という高圧環境で燃焼が行われます。比推力は、真空中では291.4秒、海面高度では247.7秒という値を示しており、当時の液体燃料ロケットエンジンとしては効率の高い部類に入ります。

主要な搭載機

RD-216エンジンが初めて実戦配備されたのは、R-14中距離弾道ミサイル（NATOコードネーム：SS-5 Skean）の第1段でした。R-14は冷戦期においてソ連の重要な核抑止力の一つであり、RD-216はその推進を担う心臓部として機能しました。

R-14ミサイルがその役割を終えた後、RD-216エンジンは平和的な宇宙開発へと転用されました。R-14を基に開発されたコスモス1（GRAU指数：65S3、NATOコードネーム：SL-8）人工衛星打ち上げロケットの第1段として、現在でも運用が続けられています。コスモスロケットは、小型衛星の打ち上げなどに広く利用されてきました。

国際的な関与に関する報道

RD-216、あるいはその派生型や同系統のエンジンについては、国際的な関与が報じられた事例も存在します。特に、2000年2月9日付のワシントン・タイムズ紙は、1999年11月21日に北朝鮮の平壌国際空港からイラン航空の貨物機によって、北朝鮮のノドンMRBM（中距離弾道ミサイル）に使用されるものと同形式のエンジンがイランへ輸送されたと報じました。この報道に基づき、イランが開発を進める長距離ミサイル「シャハブ6」や、関連する人工衛星打ち上げ用ロケットにRD-216の派生型が使用されているのではないか、という説も一部で唱えられています。ただし、これらの情報は公式には確認されておらず、推測の域を出ないものとされています。

派生型

RD-216には、RD-216M（GRAU指数：11D614）と呼ばれる派生型も存在します。これらの改良型は、エンジンの性能向上や信頼性の向上を目的として開発されたと考えられます。

RD-216は、ソ連およびロシアの宇宙・ミサイル開発史において重要な役割を果たしたエンジンであり、その設計思想や技術は後継のエンジン開発にも影響を与えたと考えられます。

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